空想映画日記

イエスタデイの空想映画日記のネタバレレビュー・内容・結末

イエスタデイ(2019年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

虚構の成功に縋ることが、果たして本当に幸せだろうか?

夢を抱いている人間なら、どんな手を使ってでも有名になりたいと思ったことはあるだろう。ジャックも、どうしても歌手として有名になりたいという思いを捨てきれなかった。ビートルズの歌を盗作することで夢を叶えつつも、毎日罪の意識に苛まれるようになる。

私は常々、人生で何かを手に入れるには、何かを犠牲にしなければならないと思っている。 全てを手に入れることはできない。仕事に命を懸けた代わりに、家族との時間を失う。富を手に入れた代わりに、信頼していた人との絆を失う。本作のジャックは、有名になる代わりに心の平静を失ったのだと思う。

上記を踏まえて、イエスタデイのすごいところは、そんなジャックを「許した」上で、彼自らが悔い改める点だと思う。
実は劇中、どういうわけかジャック以外にも、ビートルズのことを覚えていた人が二人登場する。彼らから見れば、ジャックがやっていることは完全に盗作でパクリでビートルズのコピーだ。当然、ファンだったら(ファンでなくとも)許せない気持ちになるだろう。告発してやろうという気持ちになるだろう。でも、彼らは怒らなかった。むしろ、「ありがとう」と言うのだ。ビートルズの音楽がない世界なんて退屈だ、この世界に彼らの曲を蘇らせてくれて、と。隠し事は暴かれてしまう映画が多い中、こういう展開になる映画は珍しい。

イエスタデイは、怒りのような負のパワーではなく、許しのような陽のパワーこそが、人の行動を変えるということを伝えたかったのではないかな。

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