ギルド

カニバ/パリ人肉事件 38 年目の真実のギルドのレビュー・感想・評価

1.4
【異質なドキュメンタリー映画で見せる生々しい人間的喜び】

 知る人ぞ知るパリ人肉事件の犯人である佐川一政と関係者を追ったドキュメンタリー映画。
カニバリズムに発展した経緯を知る映画…と思いきや脳梗塞で実弟に介護されながら過ごしている彼を過去の出来事と交えながら映す感じ。なのでドキュメンタリー映画としては静的な人間そのものを映したリアリティある一作に感じました。

 いわば佐川一政の生き地獄を描いていることを痛烈に表現するかの如く先の見えないボケたカメラワークと徹底した生活音、カニバリズムが齎した生き地獄の波紋を受けた者たちの実情を描いていて、閉鎖的かつ陰鬱さをシアター越しから滲み出る作りがドキュメンタリー映画としては不気味でした。
引用された佐川一政に関する漫画/AVと実弟の知られざる一面、とある女性との関係で世論の社会的制裁による生き地獄の中にも一抹の人間らしさが存在する。「かつて世間に衝撃を走らせ誤訳によって生き延びたけど世論的制裁を受けたけど、それでも人間らしい喜びを享受したい」というメッセージがあるが…
ここが本作のドキュメンタリー映画として異質な存在を放っていて、この映画そのものが佐川一政の思想の背景であり彼そのものを体現しているかのような作りになっているのが特筆すべきところだと思います。
やってること自体は奇妙なカメラワークを通じた生き地獄と過去の出来事を延々と映しているけれども、彼の現在を映して「こうゆう悲惨な目に合ってるんだよ」と慰めを促す面と性癖と抑圧の末にカニバリズムに発展した彼の思想の身勝手さ・メディアを含めた影響の大きさをありのままに映す面が混在している。
決してカニバリズムになった経緯を見せる訳ではない、寧ろ映像資料として見世物の如く映すノンフィクションドキュメントが見る人を試す着地になっているのが一線を画していると感じました。

 これが面白いもの・観客が求めているものか?と言われると疑問ではあるし、正直言って1日にレイトショー1本しか上映されていないのも理解できるくらいに退屈でした。
映像資料として見るなら見ても良いけど、娯楽性やサブタイトルを求めるとガッカリすると思います。映画としての面白さは皆無でした。
なんというかマーケティング含めてメディアの悪い一面を見てしまった気持ちになった気がします。
ギルド

ギルド