真田ピロシキ

放課後ソーダ日和-特別版-の真田ピロシキのレビュー・感想・評価

放課後ソーダ日和-特別版-(2018年製作の映画)
3.5
やる気がなくて時間を持て余してるので何か短い映画でもと思い、推しバンド羊文学の塩塚モエカさんが音楽を手がけている本作を選択。映画が始まってすぐに流れる羊文学の『ドラマ』、タイトルでは『天気予報』。羊文学の長尺MV?

正直言って女子高生の話なんてノットフォーミーだろうし、枝優香監督の過去作『少女邂逅』のスピンオフ的な話でそっちを見てないので期待もしていなかった。しかし案外悪くなく退屈せず見られる。3人の主人公がそれぞれ個性的で良くも悪くも"普通"なサナ、人気モデルのモモ、過去のトラウマから声を出せなくなってる内気なムウ子のまず接点がなさそうな3人がひょんなことから小腹を満たしに。そこでムウ子が選んだのがスタバでもコメダでもなくおじさんばかりがいる渋い佇まいの喫茶店でクリームソーダを注文。若い人ってクリームソーダ知らないものなんかね。レトロ可愛いを見出した模様。気に入った3人はその後も連れ立ってクリームソーダ巡りに。そこで見せられる店がどれも趣があり、多様なクリームソーダのカラフルさが映画を華やかせていて見てるだけで幸福感に包まれる。

その中で各々が抱える悩みも描かれて、常にモデルとしての自分を演じなければいけない多忙なモモや喋れないムウ子、将来の展望が何もないサナが心からの言葉でそれぞれ救われる姿が気持ち良い。常にクリームソーダの写真を撮ってSNSに上げていたモモや自信を喪失するとまたスマホの音声に声を託していたムウ子がスマホから脱却するのはありがちとも言えるが、「写真撮ってたらアイスが溶けてしまう」とモモが言うのは大事なことで、記録に残すことばかり考えて味という形に残らない記憶を損なう現代人に向けた物語として良い。そしてそう遠くない内に終わりを迎える高校時代の限られたかけがえのない時間を慈しみ楽しむところは眩く、まさしくカラフルなクリームソーダのような煌めき。いつかこれが思い出になることを踏まえて語られていることを思うと、やけにレトロな店のチョイスもピッタリ。大手チェーン店にはない味。サナが父親が作った亡き母レシピの手作りクリームソーダを一緒に食べるシーンは暖色の明かりの中に浮かぶ緑の飲み物が目立っていてこれも面白い画。時々クサい台詞があるのはマンガチックな演出を入れてるように敢えてやったことじゃないかと。このちょっとした恥ずかしさも青臭さの妙味で。

それで羊文学のインディーズ時代代表曲である『天気予報』が流れる訳でしてファンの私としては非常に心地良い。今ギター練習してて最初の題材に羊文学の『光るとき』をやってて相当弾けるようになってるのですが、これを見ると初期の曲も弾きたくなってくる。ノットフォーミーかと思いきや結構刺さる映画だった。『少女邂逅』も見てみようか。でもイジメの話らしくてあまり積極的には手を出したくない。