TAK44マグナム

チャイルド・プレイのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

チャイルド・プレイ(2019年製作の映画)
3.7
そのキモい歌、やめれ!


トチ狂った人形が「親友」を迷惑千万なストーキングするスラッシャーホラー。
ホラー界のメジャーアイコンである「チャッキー」を生み出した、トム・ホランド監督の名作「チャイルドプレイ」を現代的にアップデートしたリメイク作品となります。


先進的なAIを搭載した「バディ人形」は爆発的なヒットを記録、ベトナムの生産工場もフル稼働を余儀なくされていた。
しかし、1人の従業員がプログラムの行動制限や暴力制限を解除したスペシャルなバディ人形が出荷されてしまったことには、誰も気づいていなかった。

母親と二人暮らしの少年アンディは、いつも孤独の中に身を置いていたが、誕生日プレゼントとしてバディ人形を貰う。
そのバディ人形こそ、あのスペシャルにBADなバディ人形・・・チャッキーであった。
多少の不具合がありつつも、チャッキーはアンディの「親友」として絆を深めてゆく。
しかし、徐々に過激な行動をとるようになってゆくチャッキー。
ある日、母親の恋人に暴力をふるわれたアンディはつい、「死んでしまえ」と呟いてしまう。
それを「親友の願い」と受けとったチャッキーは、ナイフを片手に出かけてゆくのであった・・・


概ね、良いのではないでしょうか。
しっかりと楽しませて頂きましたよ。
旧作とは基本的な物語の構造は同じでも、ありとあらゆる面で違いがみてとれます。
その差異をどうとるかによって評価が分かれそうですが、ちゃんと「チャイルドプレイ」ぽさは感じられました。
ただし、かなり生真面目ですけれど。
旧作で感じられた、チャッキーのキャラクターありきという匂いはだいぶ薄まっています。
勿論、マーク・ハミルの粘着質な声色もあって、本作のチャッキーもキャラ立ちは問題ないですが、やはり殺人鬼の魂が乗り移り、いかにも人間臭いオリジナル版のチャッキーにはキャラクターの濃さでは敵いっこありませんよね。
しかし、CGに頼っていないチャッキーは実在感がはっきりとあって、凶悪な殺人人形という点においては及第点でしょう。
顔からして怖いので、チョコンと座っているだけで既にホラーです(汗)

ブードゥの魔術によって殺人人形が誕生するのがオリジナル版ですが、それは製作途中で付け加えられた要素でありました。
元々の原案では、持ち主であるアンディを愛するあまり、彼の障害となる者を(心を持ってしまった)チャッキーが排除してゆくというものだったらしく、そのまんま本作に当てはまりますね。
つまり、元々の案をリスペクトした、誠実な作品と言えます。
AIプログラムの暴走という設定が、人形が永遠の友情を欲するという規格外の現象に説得力をもたらせ、同時に「少しだけ先の世界」を舞台にしたSF映画の体裁を保たせているのです。
オカルトからSFへという、オリジナル版からのカテゴリーチェンジも極めて自然で、本作ならではのオリジナリティをしっかりと確立しているのではないでしょうか。

更に、学習型AIにモラルという概念を学習させないと、大変なことになりうるという可能性にも言及。
本作では、チャッキーが殺人という手段をとるようになる直接的な要因をハッキリと見せてくれます。
それが何かと言うと、ずばり「ホラー映画」なのです!
しかも、血みどろ上等の「悪魔のいけにえ2」!
アンディたちがテレビで観ていて、ゴアゴアな場面で歓喜しているのを目の当たりにしたチャッキーは「アンディは人間がグチャドロにされるのを喜ぶ」と解釈してしまうんですね。
これはよくいわれる、子供にエログロは宜しくないというやつと同じなのかもしれません。
同時にモラル、つまり道徳観念を
教えなければ、一方的にエログロの暗黒面だけを肯定してしまう危険性をはらんでいるわけです。
そういった理由から、後述しますが本作の殺害シーンは意外と容赦なく、そんなところもコメディ風味もあったオリジナル版と異なりました。


かくして、新型バディ人形の発売日に起きる惨劇がクライマックスとなりますが、この辺りの大仰さも本作ならではの見所のひとつ。
スラッシャーというよりも、立派なパニック映画の様相を呈します。これも現代的と言えるポイントでしょう。
そのほか、アンディの味方として少年少女が登場するのも、最近のホラーの流行りですね。
殺人鬼の脅威に対して少年少女が立ち上がらないでどうするのです、と言わんばかりの激アツ展開。
しかしながら、少しばかり友人たちが薄味かもしれません。
女子はひとり気を吐いていましたけれど。
それと、アンディが難聴という設定がそこまで活かされていなかったのは何故なのでしょうかね。


以上、期待を込めて鑑賞してみて、大きく落胆するような出来映えで無かった安堵感が心地良かったりしたのですけれど、ひとつだけ期待を裏切ってくれた部分がありました。
それは、最終決戦でのチャッキーのやられっぷりが中途半端すぎるということです。
これはもう由々しき問題でして、あんなにアッサリしていたら全然ダメダメなのです!
「チャイルドプレイ」において最も美味しい要素は、チャッキーの腕や足がもげようとも、全身が溶けようとも、頭が吹っ飛びようとも、決して諦めないチャッキーの往生際の悪さ及び人形を無闇矢鱈と破壊しまくるカタルシスなのです!
と、断言してしまおう!
たしかに破壊はされますが、あれではたんなるターミネーターもどきであって、グロいホラーにはならないのですよ。
「チャイルドプレイ」という作品の本質は、殺人鬼であるチャッキーを被害者側がフルボッコにして、チャッキーがゴア描写を一手に引き受けることにあるといっても過言ではないのですから。
でも、意外なほどアッサリとしていて、正直言って最後は拍子抜けでした。
ただその分、メインの被害者となる3人がそれぞれ過激な方法で殺害されてくれはします。
特に、最初の犠牲者は非常に愉快な最期をとげてくれて大満足。
誤魔化さずにキチンと見たいものを見せてくれますけれど、R15のレイティングにしては割と刺激が大きいと思いました。

総合すると、近年のアトラクション的なホラー映画としてはまずまず合格、しかし「チャイルドプレイ」という作品が内包する本質的な楽しさは幾分かスポイルされてしまっているので、旧作群とは一線を画したニュータイプの「チャイルドプレイ」として受け止めるべきものではないかと、そんな風に捉えました。
リメイク版の宿命なので仕方のないことですが、オリジナル版とあまり比べすぎるのも無意味なのかもしれません。
とは言うものの、個人的にはオリジナル版の「凶悪ながらも滑稽なキャラクター」であるチャッキーがとことん酷い目にあうスタイルの方に軍配を上げたいと思います。
だからといって本作がつまらないという事ではなく、凡百の似たようなホラー映画より断然イケていましたよ。


でもやっぱり、顔はもう少し可愛くならないものなのかしらん・・・(汗)


劇場(イオンシネマ海老名)にて