ShinMakita

ブルータル・ジャスティスのShinMakitaのレビュー・感想・評価

ブルータル・ジャスティス(2018年製作の映画)
3.7


ムショから出たばかりの黒人青年ヘンリー・ジョーンズは、親友ビスケットの粋な計らいで娼婦と肌を合わせ、スラムにある自宅に帰ってきた。脚の悪い弟イーサンは以前どおりゲーム好きで明るいが、ママは堕落しきっていた。仕事を辞め、体を売ってカネを得ているのだ。なんとか家族を立て直さなくては…と考えたヘンリーは、ビスケットの持ってきた「仕事」に乗ることにした。ヤバイ展開もあり得るかもと、銃を三梃用意することも忘れない。

ブルワーク警察のベテラン刑事ブレット・リッジマンは、相棒のトニー・ルラセッティと共に密売人バスケスを挙げた。しかしその逮捕の様子を動画に撮られ、暴力的だと非難された挙句6週間の停職となってしまった。60歳を迎えて未だヒラ刑事の身で、病気の妻を抱えながら治安の悪い地区で娘を育てなければいけない。そんなリッジマンが思いついたのは、悪党からカネを強奪すること。他所者のディーラー、ボーゲルマンの情報を得たリッジマンは、トニーを誘いそのアジトを張り込むことにする。そしてついにボーゲルマンが2人組の黒人と出かける姿を捕捉。尾行し、取引現場に乗り込んでカネを頂こうとするが…



「ブルータル・ジャスティス」。

以下、ネタバレの確率50パーセント

➖➖➖

サム・ペキンパーからスローモーションを抜き、
北野武からブルーと久石譲を抜き、
スコセッシから優雅さを抜いて、
タランティーノからユーモアと慈悲を抜く…

それがS.クレイグ・ザラーの映画です。
いわゆる暴力詩人監督の系譜に連なる監督ですが、かなりクセがあるし、尺が無駄に(俺は無駄とは思わないけど)長く、展開がスローなのが特徴。あと、やたらと人体を解体したがるフェティッシュな一面もあります。まずは過去2作で予習が必要かも

「トマホーク」日記
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1975510456&owner_id=2940502

「デンジャラス・プリズン」日記
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1975592327&owner_id=2940502

で、本作は、いつものザラー映画なのに、スパイク・リーのエッセンスも入れてきたのが興味深いとこでしたね。

主役のリッジマン刑事を演じるのはメル・ギブソン。その化石っぷりが徹底しているのが面白いです。タバコを手放せず、携帯はガラケーで、朝からコレステロールたっぷりのメシを食うリッジマン。銃はもちろんリボルバーです。警官ゆえに有色人種を信用しない上に、娘が黒人に虐められているので、かなりの差別主義者なんですね。
もう一方の主役ヘンリーは、典型的な黒人青年ですが、貧しく、白人にこき使われ、肌の色をごまかしてアイデンティティを奪われるという「黒人の歴史」を体現していく役どころです。

そんな刑事と黒人が対峙した時、果たして共存は可能なのか?というのがテーマだった気がしてならないのです。ライオンを眺める者とライオンを狩る者、ホワイトハンター・ブラックハート、2人の対比がミソの映画なんですよね。


産休明けの銀行員や、洋服店を営む情報屋など、「デンジャラス・プリズン組」のクセのあるキャラたちも楽しい。中でも、リッジマンの元相棒で出世した警部役でドン・ジョンソンが存在感を示します。壁の新聞切り抜き写真は「マイアミバイス」の頃のかな?

ボーゲルマンを演じたトーマス・クレッチマン(「タクシー運転手」でガンホ兄貴を雇う記者)がイマイチ目立たないのは残念。でも、トニー役ヴィンス・ボーンは良かったです。「アンチョビ」は今年の流行語大賞でしょう(笑)。

産休明けの女性の生活環境をじっくり見せるかと思ったら、5秒待ち黒ずくめ男1号2号については何も背景を描かないというバランスもザラーらしい。オリジナルのサウンドトラックを堪能しつつ、ブルータルな世界に身を投じるのも良いかもしれませんよ。俺は大好き!ショットガンサファリ〜🎵
ShinMakita

ShinMakita