二宮君はこういう、一見普通っぽい、でも人間性の高い人柄の役をさらりと演じるのが本当にうまいなあ、と思う。
たぶんこの映画の肝は、くすりと笑える暖かな家族写真を撮る写真家としてのリアル浅田さんの背景を知ることで、被災地の大きなえぐれた傷に写真家の彼らしい凄く大切な役割をちゃんと見せてくれたところにあるんだな、と感じる。
写真の力、と一言で言うには苦しいくらい、たぶんあのときいろんな人が愛とか未来を信じられなくなってて、凄く苦しんでて、暗いところにいた。そういうものを言葉じゃないもので引き上げようとするときに、リアル浅田さんの家族の途方もない愛が助けになったのは間違いないだろう、と思って。
両親に愛され過ぎてるダメ次男を羨ましがりながらも結局そっと支えちゃう、兄役の妻夫木くんが良かった。あと、リアル若菜ちゃんを彷彿とさせる黒木華ちゃんのひたむきな優しさも。周りの人が才能を信じてくれる気持ちが、才能のあるなしそのものより、人の一番大切ななくしちゃいけない部分を育んでくれたりするんだよなあと。
直接的な地震の映像はほぼなかったけど、瓦礫や避難所のシーンがかなりリアルで怖かった。被災地の出身だけど、別に住む所があって、故郷のために何かしたくてとりあえず集まった写真を洗ってた菅田将暉くんが、もっと大変な人を目の当たりにして心の行きどころのないままに憔悴してて、それを口に出せない苦しい感じがすごくよくわかって泣きそうにもなった。だけどそういう色んな立場の人が少しずつ時間が経って少しずつ笑顔になってく様とか、とても良かったなと思う。菅田君もさすがそのへんの繊細さ、背景をとてもうまく演じていて説得力があったし。
あとは後半、ちょっときれいにまとまってる感じはありつつも、全体としてとてもほっこりして、安心する映画だったと思う。
