うみぼうず

ニノチカのうみぼうずのレビュー・感想・評価

ニノチカ(1939年製作の映画)
4.5
映画を観て声を出して笑うことはあまりないが、まさかジャンルとしてあまり好きでないラブコメディで、しかも80年前の映画で笑うとは。あの3人組がいい味出してる。オチだし。

初登場のニノチカが、あれほど笑顔になりデレるとは想像できなかったな…。すごいなグレタ・ガルボ。

セリフ回しが軽快でオシャレ。カメラワークも構図がよく画面の端の人物まで動きや立ち位置の収まりがいい。適度な長回しで没入でき飽きない。白黒も古臭さを感じず、逆に温かみを感じたり色味を想像できたりする不思議。撮りたいものが明確だから色がボケないんだろう。

アメリカ製作なので英語だし、共産主義が個人の抑圧によって成り立っており資本主義的思想への啓蒙のようにみえる。ニノチカが食や外観、服装などの資本主義的享楽を受け入れていく過程がもう少し丁寧だとさらに共感できたかも。

でもレオンも資本論読んだり、ガストンを労働から"解放"したり共産主義を一部受け入れている。しきりに「労働者」という言葉が出るが、上流階級とそれ以外との差に対してもアンチテーゼ的に示しているのでは。現にニノチカが初めて笑ったのは労働者のレストランだし、労働者と親しげに話し労働者に笑われたレオンは人民のために生きてきたニノチカには受け入れやすかったのか。

印象的なセリフも多い。
「時計の針と針が重なり合いキスをしている」
「ポーランド兵が死ぬ前にもキスをしたわ」
「今日のカロリーは摂ったわ」
「冬ツバメたちが資本主義国へ飛んでいく理由がわかった。ソ連には理想がありこの国にはあたたかい気候がある」
「僕らに木曜日は訪れない」
「演説は?」「ダメだ」
「お連れ様が化粧室で共産主義を説いております」
「私たちの敬礼はキスね」
「ラジオって何?」「買って設置するとすぐに新型が出る箱のことさ」
「似合うとはどういうことかを王冠に教えてやるんだ」
「ノービザ…」
「一人ならゆで卵、集まればオムレツ」
「思い出は検閲できません」
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