カタパルトスープレックス

ニノチカのカタパルトスープレックスのレビュー・感想・評価

ニノチカ(1939年製作の映画)
3.8
エルンスト・ルビッチ監督によるロマンティック・コメディーです。ルビッチ監督を師と仰ぐビリー・ワイルダーも脚本として参加。なるほど、粋で上品なコメディーのルーツのひとつなわけだ。

舞台はパリ。外貨を稼ぐためにソ連から送られた三人組。しかし、彼らは宝石を売って儲けるはずなのに、全く成果が出せない。そこでニノチカ(グレタ・ガルボ)が送られて来た。しかし、仇であるはずのレオン(メルヴィン・ダグラス)と恋に落ちてしまうニノチカ。果たして二人は結ばれるのか?という話です。

パリでフランス人とロシア人が流暢な英語を話す。基本的にはボクの嫌いな「字幕を読んだら死ぬ病」の外国を舞台にしたアメリカ映画なのですが、本作はコメディーなのであまり気になりませんでした。これがシリアスな映画だと全く受け付けないんですけどね。

エルンスト・ルビッチ監督は上品と下品の間をうまくすり抜ける大人の監督ですよね。上品なだけだとつまらないし、下品すぎても不愉快になってしまう。当時のソ連を風刺しているのですが、風刺もやりすぎると下品になる。そこでソ連を代表するニノチカ(ヒロイン)と元皇帝家のスワナ大公妃(ヴィラン)でうまくバランスを取る。

グレタ・ガルボの演技もとても良い。無表情なボリシェヴィキがレオンと恋仲になる、無表情のまま。それがいい。感情で動いているのに、その感情の表し方がわからない。最初はそうなはずなんですよ。そして、レストランでのシーン。レオンがジョークを言っても笑わない。周りの客は笑っているのに。しかし、ふとしたことがきっかけで……そう、絶対に感情を表すことができるきっかけがなければいけない。あのレストランのシーンはとてもチャーミングですよね!

ニノチカが感情を表すことができるようになれば、あとはスムーズ。ラストまでテンポ良く駆け抜けていきます。ロマンティック・コメディーにはものすごく悪い人はいない。スワナ大公妃だって恋する女性なんですよ。レオンを取られたくない。そのためには宝石だってあげるわ!そういうことでしょ。それはそれで健気じゃないですか。

非常に可愛らしい映画だと思います。