TAK44マグナム

いけにえマン IKENIE MANのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

いけにえマン IKENIE MAN(2018年製作の映画)
3.6
生贄はいけにえマン?


落ちてたスマホを無闇に拾うと殺されますよ!と、とんでもない警鐘を鳴らしたかもしれない「スマホ拾っただけなのに」で商業作品デビューを飾った中元雄監督率いるナカモトフィルムが、全力で80年代スラッシャーホラーにオマージュを捧げ過ぎたホラーコメディ。


携帯の電波もつながらないような人里離れた森の中で、大学の映画製作サークルが、企業に売り込む用として、「いけにえマン」というホラー映画の予告編を撮っていた。
監督のシラハタ、助手のサイトウ、カメラマンのナミエ、女優のユメミの4人による撮影は順調とは言えず、シラハタの不用意な暴言をうけてユメミが怒って帰ってしまう。
仕方なく森の中を歩いていた残り3人。
すると、深い森の中なのに楽しげにキャンプの準備をしている8人の男女を発見する。
主演女優を失って途方にくれていたシラハタだったが、あるアイデアが閃いた。
「あいつらを襲って、それを撮ればリアルなホラー映画が撮れるぞ!」
どう考えても行き過ぎな提案であったが、サイトウとナミエもシラハタの案にのり、夜を待つことに。
いよいよ極秘撮影の段となり、いけにえマンのマスクを被ったシラハタは、いかにもイチャついていそうに激しく動くテントに近づく。
最初の犠牲者は「セックスしている男女」だというのがホラー映画のお決まりだからである。
そしてテントの中を覗いたシラハタ達だったが、そこでは想像していたいかがわしい行為とは180度違ういかがわしい行為が行われていたのであった!


ホラー映画好きのシラハタがいちいち「処刑軍団ザップかよ!」やら「食人大統領アミンかよ!」などとツッコミをいれたり、「レディプレイヤーワン」の名台詞よろしく「俺は・・・(死霊の)はらわた2でイク!」と格好良くキメたりしましてね。
そういう映画ネタをたくさんブッ込んでくるタイプの、「ホラー映画好きさんホイホイ」みたいな作品です。
なので、見事にホイホイされた次第(苦笑)
いけにえマンの外見は、「13日の金曜日パート2」のジェイソンを「悪魔のいけにえ」のレザーフェイスのような体格にした感じで、後半は前述した通り「死霊のはらわた2」のアッシュをパクります。
面白いのは、ああいったマスクを被っていると視界が悪く、映画の殺人鬼のようには動けないというネタ。
そりゃそうだよな、と納得!

これ以上はネタバレが激しくなってしまうので殆ど何も書けません(汗)
お話は全然違いますが、ノリは自滅ホラーの傑作「タッカーとデイル」みたいな感じでした。
内臓デロデロや首チョンパ等、きっちりとゴア描写も見せつつ、比重はコメディ寄り。
それでも、セットで撮影された食卓の場面の狂気など、ちゃんと怖さも追求されています。要するに「悪魔のいけにえ」なんですけれど、ここは愉快でもあり不快でもある名場面だと思います。

「一文字拳序章-最強カンフー少年対地獄の殺人空手使い-」で華麗な体技を魅せてくれた茶谷優太といけにえマンのタイマンも見どころ。唸るチェーンソーを空中でスルリとかわすなんていう格好いいアクションを披露して
くれますが、この一連のアクションが最後に別の形で活かされるのが最高に笑えましたよ!
すげえ無理やり感が昔の香港映画みたいです!(笑)

物語の構造的には「スマホ拾っただけなのに」と同様で、ついでに言うなら同時上映の「はらわたマン」も同じなので、わざとかもしれませんがもう一捻り欲しいかなと。
あと、劇伴が弱いというか、今ひとつ劇場で映画を観ている感が乏しかったような気がします。
もっとドーン!バーン!キーン!と、不協和音をかき鳴らしてもらっても良かったのですが・・・。

映画サークルの泣ける友情や、人を見た目で判断しちゃいけないという教訓話も内包しているかと思いますけれど、そういったドラマ部分は尺の短さもあってオマケ程度。
やはり、それよりもホラー映画のお約束とか、そういった部分でクスクス笑う目的で観るべき作品ではないでしょうか。
キャンパーたちの構成が、処女のヒロインと優しいヒーロー、ジョックにクィーンにナードにゴス・・・とか、そのまんまじゃん(苦笑)!
どうしてもニヤニヤしちゃいますよね。

でも、「処刑軍団ザップ」や「スクワーム」などが好きと語る中元監督はどうやらボンクラ映画ならジャンルを問わずにお好きらしいので、ホラー映画ネタ以外も唐突に飛びだすから侮れません!
シルベスター・スタローンがハサミでピザを切る暴力映画「コブラ」ネタも無理やり捻じ込まれていて、何だか久し振りに「コブラ」を観たくなっちゃいましたよ(苦笑)

そんなわけで、愉快で楽しい作品でした。
80年代スラッシャーホラーを愛する人、処女を見分けられる自信のある人、そして「コブラ」を観たくなりたい人にオススメです!


劇場(池袋シネマ・ロサ)にて