しゅんまつもと

ミッドサマーのしゅんまつもとのレビュー・感想・評価

ミッドサマー(2019年製作の映画)
4.5
冒頭と終盤で対になる「火」と「雪」の象徴、部屋に飾られる絵、鏡を使った断絶。
序盤に示されるあらゆるものから、すでに決まった悲劇的な結末に繋がることが予想される。『ヘレディタリー』には心底やられたもののその閉鎖的な物語にあまり惹かれなかった。しかし今作はほぼほぼ同じ枠組みでありながら物語が進むにつれて謎の開放感で満たされていく。ある場面から、もう自分はなにを観させられているのか、この映画がどこに向かっていくのかがまったくわからなくなってしまう。でもそれが心地いい。

そういう意味では「コントロール」の映画でもある。破綻した関係の上で自分の進む方向委ね続けるダニーとクリスチャン。それが後半にどのような形で変化していくのか。

ある側面から見ればこの物語は「ひとりじゃないよ。」と言ってあげるだけの映画なのだ。そのたった一言が自分を縛っていた鎖から解放してくれることってあるよね?その存在が必ずしも万人が正しいと言えるものじゃないことだって、あるよね?

ホラー描写は1、2カットくらい?ゴア描写は見た目でドン!が結構あるけど明るくて綺麗なので何故か見れてしまう。とにかく見ている間の感情の所在のなさこそがこの映画の恐怖のポイントだと思うので、明るいホラーなら大丈夫!と思って観に行った人はまったく違う角度からトラウマを植え付けられるはず。でもそれが大正解。最高の映画体験。