ろく

サウナのあるところのろくのレビュー・感想・評価

サウナのあるところ(2010年製作の映画)
3.4
自分をさらけ出せる場所があるってことは幸せなことだよ。

よく考えたら僕はあまり「自分」をさらけ出してないかもしれない。もともとお酒は飲めるほうではないので呑み友だちとかは全くいない。飲み会だとどうにも居心地が悪くて楽しくなかったりする。

友人とも疎遠だし、仕事仲間とどうでもいい話をするくらい。うん、つまらない人生かもしれない。だから映画を見るのかも。だってそこだけは「気を使わない」でいいから。

考えてみたら僕の趣味は登山に映画に読書だ。どれも一人で完結できるレベル。もともと誰かと話を合せるのは苦手だった。それでいい、僕はそれでいいんだよ。

と思ってたけどね。でもこんな映画を見ると、自分をさらけ出せる「場所」が欲しいかもと思ってしまった。

フィンランドの人にとってはそれは「サウナ」でないのかな。まさに文字通り「裸になって」。この映画ではまるで告白のように自分の喜び、悲しみ、怒り、幸せをサウナに入っている男たちは語る。サウナは全てのそんな感情を浄化する、だからみなサウナに入る。

ちょっとうらやましいんだよ。自分を語れることが。そして聞いてもらっていることがさ、それは僕にはないことなんだ。そしてそれが唯一あるとすればこのようなSNSだけなのかもしれないと。それは良いことでもあるけどやはり少し「寂しい」んだ。だからってどうするわけではないけどね。

この映画ではフィンランドの男たちがとにかくサウナに入りながら「自分を語る」。それは全く興味ない話かもしれない。でも少し(僕にとって)面白いんだ。なぜかって。それはフィンランドのお国事情とも関係するかもしれない。ソ連=ロシアとの領土争いを経ていつ「不安が現実になるか」そんなことを思いながらも強く(でもたまに弱く)生きる彼らを見て、少し元気が出る。ちょっと人ともかかわっていこうと思う。それだけでもこの映画はありかもしれない。

何でもない話なのに最後のシーンではジンときてしまった。彼らが歌う讃美歌?とともに。どうでもいい話をしたくなった。サウナに入りながら、ね。
ろく

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