ちゅう

ミッション:8ミニッツのちゅうのレビュー・感想・評価

ミッション:8ミニッツ(2011年製作の映画)
3.8
"あと1分の命ならどうする"


タイムループものといえばタイムループものなんですけど、設定に一捻りありましたね。
ある事件を解決するために同じ8分間を繰り返すんですけど、なぜそれができるのかというところにアイデアがあって、それがこの映画の世界観を決定づけてます。

映画の雰囲気としては正当的なサスペンスで、何も考えなくてもドキドキして楽しめると思います。
ジェイクギレンホールの演技も抜群ですし。


でもタイムリープもの好きの僕としては深く考えちゃうんです。
いつもこの手の話で感動するということは、そこに僕にとって大事なことがあるような気がするから。
そして、このジャンルが多くの人を楽しませているということは、僕にとって大事なことと多くの人にとって大事なことに重なる部分があるということだと思うから。

だから少しだけ考えてみようと思います。


タイムリープものって時間がテーマなんですけど、必ず平行世界の話にもなるんです。
同じ時間に違う行動を取るわけだから、世界が別と考えざるを得ない。
なので時間や世界に対してどう考えるかで、描き方も変わってくるわけです。

そこで最近の映画の主流と思われる考えは、主観が大事であるというもの。
それが"本当の"世界かどうかよりも自分がリアルと感じるかどうかが大事であるというものです。

例え幻想だったとしても自分がリアルだと感じてしまえばその感覚を裏切れない。
その感覚を裏切ってしまえば、自分が生きていることそのものに確信が持てなくなってしまうから。

この映画もその考えをとっているように思われます。

そう考えるとこの主人公がクライマックスでとった行動に納得がいくと思うのです。


また、その考えをとるとき、時間についても普段僕たちが考えるものとは違ってくるように思われます。
普段、時間については均一に流れるものだと漠然と思っていて、だから例えば一時からの一時間と二時からの一時間は同じ長さだと考えている。

けれど、世界が主観で構成されているのであれば時間も主観で構成されてしまう。

一時からの一時間はとても集中したので短かったけど二時からの一時間は退屈で長かったというよくある経験が、時間の流れとして正しいということです。
主観によって伸び縮みするのが時間の性質だということです。

そこで、この映画のラストについてどう考えるか。
世界線が変わったように描かれてるんですけど、それはなんなのか。

僕は一瞬が永遠になったという捉え方をします。
つまり主人公の主観によって時間が無限に引き伸ばされたと僕は考えます。
なのでラストは無限に引き延ばされた時間が成立させた世界での話と捉えます。
レビュー冒頭のセリフに対してヒロインが言うセリフが根拠です。


こう捉えると、もしかしたら物語として矛盾が出るかもしれないんですけど、僕はこう考えるほうが価値があるんじゃないかなと思っています。



ちょっと難しく考えすぎのような気もしますし、僕自身まだ理解しきれてなくてわかりづらい説明になってる部分があると思うのですが、心の奥底でこういったことを無意識的に感じているからタイムリープものを面白いと感じるのだろうと思うので頑張って考えてみました。

タイムリープものって、どこにフォーカスを当てるにしても切なくなるんですけど、それはきっと世界や時間というもの自体が切なさの根源であるからなんだなと思います。
めちゃくちゃ当たり前のことを言ってるような気もしますが笑
今までタイムリープものについてレビューしたものも、具体的なことについて考えてただけで核心は一緒だなとも思いました。


世界の捉え方については以前レビューしたとおりクリストファーノーランの「インセプション」という映画に描かれていますし、時間の捉え方については村上春樹の「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」という小説に秀逸な説明があります。

面白いので興味のある方はお試しください。
ちゅう

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