トモ

淪落の人/みじめな人のトモのレビュー・感想・評価

淪落の人/みじめな人(2018年製作の映画)
4.7
とても良い作品だった

観たい映画が沢山あるなかでこれを選んで正解だったと思う

劇的な展開があるわけでもなく四季を通して丁寧に時を刻んでいく様が心地よい

人が何かを抱えているなんて他人には分からないし、どんな状況でどんな出会いで人がどのように変化してゆくのか

背景を押し出さず自然と滲ませ、心情の変化を描いている、香港の現状も描きつつ。限られた時間でとても新人の監督とは思えない繊細で落ち着いた構成力

主演お二人の演技があって成り立つ

自分の境遇や世の中を悲観して後ろ向きな言動をしていたとしても、その裏側では自分が重荷になることや夢を抱き前を向くことでの弊害そして遠慮、諦め

家族には遠慮をしているが、その分雇用関係である家政婦に厳しい

そんな家政婦との出会い、共に暮らす時間が彼を変え、そして悩みを抱える家政婦も変わっていく、二人が少しずつ輝いていく様がとても素晴らしい

現実を表す辛いシーンもあるけど人間味ある温かなシーン、おしゃれなシーン、笑えるシーンが沢山あり、とても良い台詞が多い、美しい映像、少ない分効果的である音楽

国が違うので文化や多少心情の変化は違和感があるのは当然だが、やはり思うのは他者への愛情が深い、日本人はさっぱりしてるのかな、自分だけかな…笑

チョンウィン役の日本名「秋生」ことアンソニー・ウォンさん、インファナルアフェアの時とはイメージ違うけどやっぱり渋い、そして演技が素晴らしい、作品に惚れ込みノーギャラで受けたそう、良作である説得力

家政婦エヴリン役のクリセル・コンサンジさんは映画での演技は初だそう、しかし心情の変化の演技がとても上手かったです

その他二人に関わる人物の描写もとても丁寧

どんな状況であっても夢を持つ事の大切さ素晴らしさを描いた作品ではあるけど、個人的には人の深い部分を見る目を養う事のできる良作でした
トモ

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