ルッキオ

イップ・マン 完結のルッキオのレビュー・感想・評価

イップ・マン 完結(2019年製作の映画)
4.2
「イップ・マン」とは水戸黄門である。
実在した人物を使ったフィクションもそうだし、見た目弱そうな人が実は強いというギャップもそうである。
「4」は「1」から30年近く経ってるので、設定年齢は70代。
練習や鍛錬なんかしてるとは思えないのにやたら強い。
しかも見た目は「1」から全然変わらないというファンタジー。
ますます水戸黄門色が強くなりました。
水戸黄門だから色んな土地へ行脚して困りごとを解決するような作品はもっともっと作れるんだけど、残念ながら「完結」。

これと言ってアメリカに行く必要のない脚本。
まさに、ブルース・リーを出すためだけの強引な話運びです。
チアのいじわる娘が野放しなのも気になるところ。
でも、そんなことは三作観てきた人なら気になりませんね。
親と子の分かり合えない感情。離れて気づく愛情物語。
ラストのイップ・マン回想録はジンワリしてしまいました。


舞台はアメリカ。
白人至上主義や中国人コミュニティへの差別がテーマではあるけど、どうしても香港で今起きてることを重ね合わせてしまう。
中国による統制強化と暮らしにくい環境はこの映画と一緒。

もし仮に、今後の香港映画が検閲を受けるようになったら、香港映画は自由に作品を作れなくなる。
そう思うと、今作のようなエンタメ作品の中に社会批判を紛れさせていくしかないのではなかろうか。
香港映画を守れるあの人は、残念ながら今は中国寄りになってしまった。
ブルース・リーを扱った作品で、ドニー・イェンが香港映画を守ろうとしているような構図を考えてしまうのは大分うがった観方なんでしょうかね。
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