しゅんまつもと

ひとよのしゅんまつもとのレビュー・感想・評価

ひとよ(2019年製作の映画)
3.6
確かに何回も擦られたようなありがちな話ではある。それでも2時間近く見られるのは本当に役者陣の好演のみによるものだろうか。これもっと別の人に撮らせたらもう目も当てられないようなものになってた気がするんですよね。そうなってないのは白石監督がエンターテインメントとして映画を撮ることを忘れてないからだと自分は思う。そうじゃなければあんなむず痒くなるくらい外連味たっぷりのカーチェイス撮れなくないですか?自分はあの3人が、果たせなかった想いを取り返すかのようにタクシーに乗り込むシーンでやっぱり無性にワクワクしちゃうんですよね。(せっかくの暗闇だしタクシーの灯りを効果的に使っていたらもっとワクワクした!)中盤の無線のやり取りもそう。そういうところはやっぱり支持したい。
中庭の使い方も見事。兄妹総じて喫煙者の「笑っちゃうよな。笑えねーのに。」や、木漏れ日の中の散髪のシーン。

しかし、稲森家を相対化する家族として佐々木蔵之介を選んだのはどうだろう。それでは単に現在を上手くやれるかどうかの比較にしかならなくて、なんとも答えを濁されたような感覚になる。向かい合うべきはやはり社会や世間だったのでは。