えむ

甘いお酒でうがいのえむのレビュー・感想・評価

甘いお酒でうがい(2019年製作の映画)
3.6
なんだか不思議なユルユル映画でした。

40代のもうおひとり様か板につきまくったベテラン派遣OLの日常が、ほんとうに文字のままゆるーっと描かれてます。

敢えて前にも出ることもなく、職場でも背景みたいに溶け込んじゃうタイプの主人公が、日常のなんでもない事にウキウキしたり悲しんだりビックリしたり、日記に綴られたそれが、日付と共に淡々と描かれていく。

ひとつひとつは、感じたり、想像したりしたことがあるかもしれないけど、それが日々列挙されると、どこか不思議な人に思えてくるから、それが不思議だ。

『私を食いとめて』ののんちゃん、『勝手にふるえてろ』の松岡茉優ちゃん、大九明子監督の作品の女性って、どこか捻ってるというか、拗らせているようなところがあるけれど、この主人公は最初、年齢的にも経験的にも、拗らせた先にある悟りの境地を感じるんだよなあ…

というわけで、私には何故か、普通さがやたら『普通でなく』見えちゃうのでした。

案外、地味で普通、をやり続けることって、変化に追われる今の世の中においては、何かを通り越して普通でないのかも。

ラスト、それまで喜怒哀楽はあっても、あまり表にあけすけに感情が現れることなく、全てにおいて控えめだった主人公が、鏡面に映る笑ってる自分の姿に涙を流す。

お誕生日、ハッピーバースデー。
そうやって今までのやり過ごすような笑顔から弾ける笑顔を出せるようになった私、誕生おめでとう、って感じなのかな。

ゆるゆる過ぎて、観ててぽやーっとして来るけど、心情に合わせて色々な音が絶妙にシーンに寄り添う演出は好きでした。
えむ

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