中川龍太郎監督にハズレなし!
掬っては零れ落ちる水のように残らずともそこに存在したという感触を刻む事が終わりを再生へと繋ぐ糧になる。無常に移ろう場所や人の営みにあって、それ程不確かな感覚でも人は止まったものを前に進められるという監督の過去作から一貫した柔らかな背中押し。めちゃ好きです!
区画整理迫る下町、時の流れによる割と大きな終わりを感傷たっぷりに捉えながらも、そんな消えゆく町の銭湯から重ねた儚さを胸に刻み一歩を踏み出そうとする主人公・澪の解放の物語は実に慎ましくも芯がある。抗えないものとどう向き合うか、〝しゃんとする〟関わりの先の口元緩む感じが素敵だ!
『四月の永い夢』などに比べても感情の吐露は抑えめながら人の心を溶け込ませた風景や空間もろとも情感たっぷりに語らせる。監督の一層直球な想いが過剰に溢れ過ぎな気もするけど前作のラジオ同様唐突なメルヘンも邪魔にならない変化に満ちた人の神秘性は相変わらず美しい言葉にも宿ってて心地良い。
流されてるようで要所要所で生命力漲らせる松本穂香の魅力もたっぷり。あと前作の国立然り今回の立石も東京という変容最前線の街にあってどこか郷愁を感じさせる緩やかさ。住んだことも行ったこともないのに懐かしい空気を感じたw銭湯もラーメン屋もズルい!そこでくたびれる光石研はもっとズルいw