ベビーパウダー山崎

人妻拷問 三段責めのベビーパウダー山崎のレビュー・感想・評価

人妻拷問 三段責め(1992年製作の映画)
3.5
コロナ対策で一列開けて座るようにと変化があったポルノ映画館。老人が咳をするのはしょうがない。毎回目にするぴちぴちの服装に黒髪のカツラをつけた老婆は今日も来ていた。本作前に流れていた『さすらいかもめ 釧路の女』は演歌に人生を乗せて映画に放流したような普通によくできたつまらない西村昭五郎だった。精神分析医にためらいのない暴力(SM)、都会、都心のホテルでのセックス、どこか不確かな近未来の出来事として錯覚する、女性の身体を限界まで締め上げるように縛る、肉体破壊、佐藤寿保は生体を異形の塊として映す(フェティシズム)。物語ではなく撮影を工夫して安定した画から少しでも離れようと挑む、決まり切った「映画」への抵抗。日常を撮ることに長けている作家は数多いが非日常で勝負して勢い殺さず終盤まで加速し続ける作家は佐藤寿保くらいだと思う。ポルノ枠で多重人格者を柱として表現してくれと言われたら、俺なら怯む。三面鏡とプリズム、シナリオに書かれていたかどうかまでは分からないが、こんなギミック使ってそれなりに成功しているのはもっと評価されていい。夫側からの反転はオチとして必要なんだろうけど、あまり好きではない。もっと突き放してほしかった。ラストの「後ろの正面だあれ」、80年代の佐藤寿保なら全裸にして街に放り出してヤらせていた(言わせていた)と思う。