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パラサイト 半地下の家族のsokoniruのレビュー・感想・評価

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
4.7
感覚が冷めないうちに言語化しないと!と焦らされた映画は初めて。そしてちゃんと言葉として記録に残すのに丸1日要した。鑑賞後しばらく放心状態だった。

完全にやられた!富裕家族が隠すとんでもない秘密なのかと思ったら、カメラのピントは最後までキム一家に合わせられていた。

印象が強い映画ほどそうだが、鑑賞後、映画館を後にし家に帰るまで目に映る光景がすべて、自分の目がレンズとなり、カメラがまわって自分が見ている現実でさえ、映画の中の出来事のように思えてくる。今回は特にそう。

監督はとにかく日常の出来事を非日常の事件に仕上げる演出力に長けてる。そう思わされるような見事なシナリオ、細部まで張り巡らされた伏線で、映画を完璧にしていた。

同じ感覚で言えば園子温もそう。現実に起き得ることない出来事だけれど、どこかでネジが一旦外れてしまうともう後戻りできなくなる、どんどんその渦の中に沈んでいってしまう。

グエルムルを撮った監督で有名だったからか、夜中の豪雨の日にインターホンが鳴る場面や、ダソンが幽霊を目撃した場面などところどころ背中がヒヤッとする怖さもあった。

豪邸をどんどん侵食(パラサイト)していき、キテクは思わず金持ち一家と同じ世界に住めている・溶け込めていると思っていた。けれど、半地下での長年の生活で染み付いた富裕層と貧困層の決定的な違い「臭い」が取れることはなかった。

ダソンの誕生日パーティーに集まった人達を眺め、ギウが呟いた「突然呼ばれた(計画外のことが起こったのに)のに、なんて優雅なんだ」という発言は明らかに自分達が今直面している状況と重ね合わせて出た心の声だったように思え、悲しくなった。

ポスター左下にある足が何を意味するのか、様々な描写が見えてきた。殺された家政婦の足=半地下の象徴、頭を打たれたときのギウの足?

家政婦が豪邸に勤めることができても結局金持ちになれることはなかった。そう、同じ土俵に立つことは一生無かった。キム一家に関してもそう。その情景描写がこの上なく残酷で、でも丁寧に描かれていた。胸が苦しくなった。

モールス符号。それは地下と地上を繋ぐ導線。結局、ダソンはあの地下から発信されていたメッセージに気づいたのだろうか...?

この映画には色んなヒントが隠されていたので、それを一つ一つ丁寧に観察して鑑賞後につなぎ合わせて見てみても面白い。劇場でまた鑑賞したいと思った映画は初めて。

唯一不満があるとすれば横に座っていたカップル(女)が終盤に差し掛かり集中力をピークに要するタイミングで、何かを落とした。それを横にいる彼氏に笑いながらコソコソ話していたこと!
それだけにとどまらず、劇中ちょこちょこスマホを開いていたこと(画面明るいし...)消耗作品ならまだしも、ゴールデン・グローブ賞で外国語部門を受賞した映画だぞ!?ふざけんなよ!?映画館でもっとも避けたいこと、それは民度、リテラシーの低い客の側に座ること....。エンドロールで前を通り過ぎたときに舌打ちでお見送りしてあげました。

国境を超えて人種を取っ払って、誰もに響く映画だと思っている。ワンハリ、アイリッシュマンと並び、最有力と言われているが、アカデミー賞取って欲しいな、アジア映画で快挙になるぐらい、今一番勢いのある作品。
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