ユースケ

パラサイト 半地下の家族のユースケのネタバレレビュー・内容・結末

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

半地下住宅に住む貧乏一家が高台の豪邸に住む金持ち一家に寄生していく姿を通して韓国の格差社会を描いたブラック・コメディ。

貧乏一家が金持ち一家に寄生していく華麗な愛の貧乏脱出大作戦が、貧乏夫婦の登場をきっかけに貧乏人同士の凄惨な殺し合いに発展し、最終的には寄生虫が宿主をぶち殺すカタルシスに至る物語に終始感情を振り回されっぱなし。
物語のスタート地点だった半地下で物語のゴール地点だったはずの豪邸の地下に引き籠った父親の救出を夢見る息子の姿が描かれる夢も希望もないエピローグになんとも言えない気持ちにさせられました。

とにかく、物語のきっかけとなった水石を見た貧乏一家の息子の「象徴的だ」という台詞が示すように、貧富の格差を住居の上下関係で象徴したり(半地下は貧乏の象徴)、韓国と北朝鮮の関係を貧乏一家と貧乏夫婦の殺し合いで象徴したり(貧乏一家が金持ち一家にパラサイトしている証拠写真の送信ボタンは核ミサイルの発射ボタンの象徴)、搾取される者の怒りをインディアンのコスプレで象徴したり、象徴しまくる脚本はお見事。なんでも笑う隣にいた笑いのツボの浅いカップルが物語が進むに連れて静かになっていったのは本作そのものを象徴して…やめておきましょう。物語のきっかけとなった水石がニセモノだった事が何を象徴しているのかを考えると、夢も希望もないエピローグが更に何とも言えない気持ちにさせられる事でしょう。

貧乏人が金持ちに寄生する本作の裏には金持ちが貧乏人に寄生する資本主義のシステムがあり、豪雨に沈む半地下住宅が象徴しているものは、富める者が富めば、貧しい者にも自然に富が滴り落ちるというトリクルダウン理論の幻想。人間の欲には際限がないので富が滴り落ちる事なんてありません。上から下に落ちてくるものは不幸ばかりなのです。

人生ノープランは諦めの証。明日は我が身だと思ったら、とりあえず、みんな、選挙に行こう。

ちなみに、貧乏一家の母親が元ハンマー投げのメダリストなのは、メダリストの母親=トロフィーを取ったワイフという事で金持ち一家の母親=トロフィーワイフである事を際立たせるための演出であり、【グエムル -漢江の怪物-】に登場したアーチェリーのメダリストなのに貧乏から抜け出せない貧乏一家の妹(ペ・ドゥナ)同様、韓国ではメダルを取ったくらいでは貧乏から抜け出せない事を描いた皮肉の効いた演出です。