ちっちゃなきょゥじん

パラサイト 半地下の家族のちっちゃなきょゥじんのネタバレレビュー・内容・結末

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

クスッとし、ギョッとして、ハラハラできるエンターテイメント
🎞️
馴染みの映画館で未上映だったので、日本公開2週目の鑑賞。
カンヌを制したので、若干小難しい社会派かもとの先入観もありましたが、予想以上にエンターテイメントに徹していて、めっちゃ愉しめました。
感想を以下の5点に分けて書きます。
1. コンゲームにクスッ
2. 過寄生にギョッ
3. バレそでバレないハラハラ
4. パラサイトからパラシトイド(捕食寄生者)に
5. 前評判は聞かないに限る
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1. コンゲームにクスッ
貧乏一家が、資産家のパク家に、あの手この手で取り入っていく様は、「スパイ大作戦」や「コンフェデスマンJP」のよう。
桃アレルギーを利用する辺りは、テンポも良く、映像もスタイリッシュで、単純に愉しかったです。
ただ、妹のギジョンが、資産家の奥さんを思いっきり馬鹿にしているのは気になりました。
運転手を陥れる際も、素人とは思えない手口で、貧困だからといって肩入れしにくいエグさがありました。
ギジョンが後に、悲劇的な報いを受けるのも、ここらへんのエグさから、さもありなんとなりました。
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2. 過寄生にギョッ
個人的な最大のピークは、元家政婦が隠された入り口から、更なる地下へ降りていった瞬間でした。
しかもそこに、真の寄生者が巣くっているとは。
生物学では、同じ宿主に複数の寄生者が卵を産み付けることを「過寄生」といいます。
キム家だけじゃなく、家政婦の夫まで寄生していた様は、まさに過寄生。
しかも過寄生では、異なる家系どうしで競争が生じ、殺し合うことも珍しくないです。
本作の展開も、まさにそのまま。
協力なんて、甘さは皆無。
互いのエゴのぶつけ合い。
行動生態学の予測通り。
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3. バレそでバレないハラハラ
パク一家が、キャンプから突然帰宅してからのバレそでバレないドタバタは、ハラハラしっぱなしでした。
ベタっちゃベタな展開だけど、緩急ある演出で、観てるこっちも緊張しました。
ただ、床に散乱してるはずのガラスや食べ物が、短時間で片付けられるすぎな感じは否めません。
そこら辺はファンタジーなんでしょうど、若干モヤモヤしました。
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4. パラサイトからパラシトイド(捕食寄生者)に
Parasite (寄生)とは、宿主を生かさず殺さず利用して、養分を横取りする行為ですが、寄生者の中には最終的に宿主を殺す者もいます。
生物学では、最後に宿主を必ず殺す寄生者を「parasitoid (捕食寄生者)」と言います。
本作でも、パラサイトだったギテクは、最終的にパラシトイドに。
繰り返される匂いの指摘で、いつかキレんじゃないかとフラグ立ちっぱなしでした。
そして、遂に卒倒してダソンを優先しようとする行為が、ダメ押しに。
刃に倒れた家族を無碍にされ、緊急時でも地下男の匂いに過敏に反応したドンイクに、イラッとする気持ちは分かります。
ただ、わざわざ刃物を拾い、確信をもって心臓に突き刺すのは...。
明確な殺意があるし、その後全てを投げ出して逃げてしまっては、重症の家族も救えない。
最終的に「よくこんな所に住めるな」と言っていた地下に、自ら閉じこもるのは象徴的ですが、パク一家は基本的に悪いことは何もしてないので、ただただ可愛いそうに感じました。
貧しさには同情するし、最下層をセーフティーネットが整った社会であって欲しいとは思います。
ただ社会主義ではなく、資本主義での自由競争を選択するなら、富裕層が一部突出するは仕方ありません。
パク一家が、悪事の限りを尽くして金儲けしてるなら、復讐の的になりえるかもしれません。
でも、本作ではそういった描写はなく、パラサイトの方がよほどエゴイスティックに描かれているので、階級社会への批判には感じられませんでした。
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5. 前評判は聞かないに限る
前述の通り、馴染みの映画館で未上映だったので、前評判を大分耳にしてからの鑑賞でした。
なので「予想できない展開」などの評も耳に。
「予想できない...」というフレーズがヒントになり、序盤がわりとお気楽でも、やがて悲劇に方向転換すんやろなという"予想"がよぎりました。
地下パラサイトの登場にこそ、意表は突かれましたが、この時点で完全に崩壊フラグが立ちました。
家主の居ぬ間に我が物顔も、いかにも突然家主が帰ってきて焦る、ベタベタ展開のフラグ。
終盤の悲劇も、唯一の拠り所だった妻が殺されれば、夫が復讐の鬼になるのは必然。
ギテクの凶行も、匂いの指摘をあれだけ丁寧に繰り返せば、想定内の帰結。
なので、個人的にはそこまで意外の展開に、感じられませんでした。
ということで、自分のこれから観る人には、なるべく情報を与えないように気をつけます。
「小難しい社会派映画じゃなく、単純にハラハラする愉しい映画だから、オススメだよ」ぐらいにしておきます。