このレビューはネタバレを含みます
なるべくピュアな状態で、事前情報は「カンヌ大賞をとった」位で鑑賞。
黒澤明の『天国と地獄』と同じ構図を取りながら、現代劇にアレンジし、貧困層(平民)が持つ富裕層への怨みを過激な描写で表現した作品。
展開としてはよくあるかもしれないが、「怨みを募らせる描写」がとても丁寧で自然。だからこそ最後の展開が衝撃的でありながら破綻を感じさせない。
また、描写するために使う貧富の差を表す要素が新鮮でもある。
例えば、「匂い」をしつこく、執着的に多用する。匂いは、誰でも「確かに富裕層と貧民層では違うだろう」と共感できる要素だが、意外と他の作品ではその違いを取り上げることは少ないように思う。共感と意外性を使いこなせていることで観客も引き込まれる。
テンポもよかった。ちょうど飽き始めそうなタイミングで劇的な展開をするのが観客のつかみ方がうまいなーと感じた。
色々書いたが、面白かった。でもアカデミー賞の作品賞、って感じの作品ではなさそうな気がした。