このレビューはネタバレを含みます
すごく良かった!
映画として完璧では…! 冒頭とラストの状況の違い。希望のない妄想。洪水のあとの奥さんの晴れやかな顔。モールス信号。噴き上がる汚水。死んでしまった家族。生き残った家族。いろいろなシーンを反芻しています。切ない…。
誰の立場で観るかによって、ぜんぜん感想が変わる映画だと思いました。
私はどちらの家族からも遠いけれど、どちらの家族のことも少しは理解できる気がしました。
セレブ家族を自分ごとに感じる人にはホラー映画だけれど(「うちにこんな人たちが入り込んできたらどうしよう!」)、貧困家族たちに共感する人は、サバイブするための希望(「自分ならもっとうまくやれるかも」)に見えるかも。
あと、今の日本だと、特にこの映画を観に行くのは、まだどちらでもない中間層の人が多いと思うので、近い将来こうなると思って絶望感を感じる人もいそう。
2020年の今の日本だと、大人で健康で働ける能力があるのに家族全員無職、という状況より、まだ観れてないのですが、『家族を想うとき』の、その家庭の労働力の限界まで働いても一向にラクにならない地獄みのほうが、共感度が高い気がします。
荻上チキさんのポン・ジュノ監督インタビューで、
「映画の後半では誰が何にパラサイトしているのかを考えさせられる」
という荻上さんの質問に対して監督が、
「裕福な人たちも、誰かの労働に依存して、労働を吸収して生きていて、特にクライマックスのパーティのシーンでは、週末の手当てを渡せばそれでいいだろうと、つらい状況の人たちの労働力をこき使う。寄生(パラサイト)と共生は紙一重。人間と人間の間にある礼儀の問題だと思う。礼儀をしっかり守れば共生できる。でもそれが守られなかった時に何が崩壊するのかをクライマックスで描いている」
と答えていて、すごーくふに落ちました!(ラジオクラウドで聴けるのでおすすめ。別番組の宇多丸さんの、監督と主演のソン・ガンホのインタビューも良かったです)。
「礼儀」どちらの家族にも欠けていましたよね。そもそも、政治家が礼儀をしっかり守っていれば、こんな社会状況になっていないのではないかという大前提もあると思いますが。今の日本ももう危ないですよね…
礼儀を守らなくなった世界が崩壊に向かうかどうかの瀬戸際で、私たちはどう生きるのか。問われていると思いました。