真田ピロシキ

るろうに剣心 最終章 The Finalの真田ピロシキのレビュー・感想・評価

3.7
1作目には漫画を実写映画に上手く翻案した手腕にいたく感激し、2、3作目ではただの漫画実写化になったと失望したシリーズ。本作の人誅編は原作中最も人気の高い2、3作目の京都編と比べると人気は高くなく、東京から京都を駆け多数のキャラクターが登場する京都編に比べると話のスケールは小さいのでかなり物語をコンパクトに展開することが出来て、不人気故に独自展開の余地も大きいのではないかと期待した。序盤で赤べこが砲撃され、浦村署長宅や前川道場が理不尽な暴力に曝される描写は結構目が潤んで中盤にも同様に何の罪もない人々が攻撃されてて、こうした普通の人達の描写は漫画やアニメよりも実写の方が心を打ちやすく首謀者である縁一派の非道さが印象付けられる。志々雄の時はこうした演出がなかった気がするため、映画における悪党度は志々雄より縁の方が上に感じるかもしれない。

1作目でほぼオリキャラになっていた外印や名前忘れた戦闘マニアの兄ちゃんをフライングして出していたのでその分本作ではキャラクターを厳選されると思っていたのだが、律儀にオリキャラ出して穴埋めしてくれる。全く新しいキャラなら良かったが戦闘マニア君とあまり変わらず面白くもなくて、流石に左之助とは拳を交えなかったのが二番煎じを避けたと言える?どちらにしろ人誅メンバーは皆ジャンプ漫画らしくタイマンしてくださっていて、それが140分近く続くといくら谷垣健治アクションでも飽きてくる。オリキャラ君や原作のヴェノムもどきからノーラン版ベインみたいになった八ツ目なんか抜刀斎への身勝手な恨みも述べさせてもらえてないのでキャラが弱くて味方キャラの引き立て役にしか映らなかったなあと。またシリーズ通してあまり掘り下げられなかったと感じたのは左之助で、そこまで描く余裕がないのは分かるが本来なら明治政府の暗部に迫るキャラだけに勿体無い。本作でも前川が近隣諸国に干渉を進める政府を憂慮しているがあくまで背景。左之助は最大のエピソードである安慈がただ闘っただけなので喧嘩屋の友人以上になれず、なまじ強いために初登場の敵の噛ませ犬として有効利用されてて蒼紫と並んで使いあぐねたキャラと思わされた。2、3作目のようにキャラクター映画としての側面を多く感じる事に。

しかし上手にキャラクターを物語に落とし込んでいるのもあり、原作では出てこなかった宗次郎が敵の助っ人と思わせといて剣心と同じるろうにとなっているのは面白い独自展開で、物語終了後の縁に課せられた事とも重なっていて本シリーズを貫く贖罪というテーマを強調していた。それとるろうに剣心は連載当時としては中性的でジャンプ漫画らしからずマッチョイズムから離れていたがそれでも90年代ジャンプ漫画の限界でヒーローは男性キャラで女性キャラはオマケ感が拭えなかったが本作ではそれを克服している。原作同様に蒼紫が京都からやってくるがこの映画シリーズで蒼紫がやった罪を思うと「どの面下げてお頭になってるの?」としか思えない。しかし蒼紫は負傷してしまい決戦の場に御庭番衆を引き連れて駆けつけるのは操!この操が滅法強くて一人で八ツ目を倒す大活躍。完全に蒼紫を食っている。この強い女性描写は2021年に公開する映画として正しくて原作をトレースするだけではなかった1作目のキレを思い出させられた。土屋太鳳が過去作で良い動きを見せてた事もあってこの展開に説得力もある。もう一人独自展開で良かったのは張。彼も噛ませ犬要因ではあるけれど明治政府にも縁にもツッパるヤンキーぶりが実にらしく感じた。衣装も良い。

アクションシーンは今回も飛んで壁走りして高速足払いに両側から多数を押し込んだりと種類豊富で列挙するとキリがない。屋根を両断する演出もありたまに漫画以上かもと思うオーバーさも見られる。1作目で観柳が奥の手として持ち出し京都編でも方治がぶっ放していたるろうに剣心界最強武器ガトリングガンは今回も鯨波が近接戦用武器として持ち出しているが流石に3度目ともなると弱体化感は否めない。アクションのインフレとしては恐らく本作がピークで最終作のBeginningではもっと抑えた感じになるのではないかと思う。クライマックスとなる巴斬殺シーンも含めて結構本作で見せているのでとても派手な予告編見たという印象もある。本来なら最終章である縁戦を先に描ききって、過去編である追憶編を一本丸々最後に持ってくるのは原作に忠実なだけの実写化をしないこのシリーズらしい面白いやり方でどういう風に物語の幕を閉じるのか気になる所。