幕のリア

罪の声の幕のリアのレビュー・感想・評価

罪の声(2020年製作の映画)
2.8
一時期、犯罪をテーマにしたノンフィクションを読み漁っていた時期がある。
「凶悪」もそうだったし、一橋文哉の著作群がとりわけ筆圧が高く何冊も読み続けた。
その中の一作が「闇に消えた怪人―グリコ・森永事件の真相」。
本作をこれから観ようという方には是非ご一読いただきたい。
確か本件は未解決のままだが、何らかの新事実追及の報を見落としていたんだろうか、と気になりサービスデー鑑賞に選んだ。
 
警察への身代金受け渡し指示のテープに使われた子供の声。
その声の持ち主と知らぬ間に犯罪に加担することになってしまった彼らのその後。
地元近辺で長きに渡って繰り広げれた劇場型犯罪事件だけに子供の声が使われたテープの声は、当時同じく子供だった我々にも強烈で"空き缶の中"の言葉は今も鮮明に記憶している。
犯罪者の近くにいる子供の存在の闇に怯えた気がする。

事件の謎を埋める創作について興味は惹かれたし、大津を再び訪ねるところまでは改めてこの事件を追いかけるのと見えぬドラマの炙り出しに目が離せなかった。
その後の展開の小説的帰着は良いとしても、小栗旬演ずる新聞記者は著者が創り出したステレオタイプな人物でそこに冗長な演技が乗っかり噴飯物でしかなく、劇後半を残念なものにしてしまっていた。
社会部出身の記者でありながら、株取引に疎く仕手筋や空売りについて全く無知なくだりは観客への解説サービスのつもりなのだろうが、無知蒙昧にも程がある。

本編開始前の予告編から全く観る気の起きない下らなそうな日本映画のオンパレード。
本作ですら原作を映像化しただけのものという印象は全編見終えた後では拭えない。

暗闇に呑み込まれんとする宇野祥平の姿は本作で唯一映画的と言えるシーン。

そして、なんと言っても"キツネ目の男"
イラスト上の怪しい存在でしかなかった存在が写真となって現れた瞬間には震えたし、子供を追いかけ追い詰める姿には恐怖を感じたが、犯人グループの描写が弱いのは大変残念。

また、ご存知「日本統一」の田村こと山口祥行がチョイ役で登場したことを報告しておきたい。

〜〜

今日の一曲

日本の大手マスコミなどとっくに骨抜きされて"闘士"と呼べるような記者なぞ存在するのか非常に懐疑的。
本作で描かれる報道かく在るべしは懐古であり幻想のように思えてならない。

Scandal ft. Patty Smyth - The Warrior

https://m.youtube.com/watch?v=47y5bo8wtqM



2020劇場鑑賞65本目
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