真田ピロシキ

見えない目撃者の真田ピロシキのレビュー・感想・評価

見えない目撃者(2019年製作の映画)
4.0
これは良い。もちろんありえない話であるが多分そんなに嘘がない。事故で視力を失った主人公なつめをデアデビル方向には向けず一般人路線を貫く。耳はどうやら良いらしく背後の感覚も優れているようだがあくまで常識的。こういう映画では聴覚や触覚情報を視覚化する演出がよくあるが、それが非常に簡素、必要最低限なものである所からもなつめがどの程度の感覚なのか分かる。間取りの把握や格闘術と射撃など最終的な危機を切り抜けるのは目が見えてた時に培った経験の賜物というのも、安易なスーパーマン化をせず生身の人間を描こうとする姿勢が感じられる。それと地味な生活描写、視覚障害者用パソコンでネット検索をしてたようなところを丁寧に描いているのも大きい。

優秀であっても超人ではない視覚障害者は誰かの助けが必要な訳で後半の地下鉄シークエンスは印象的。犯人に追われる中、周りには誰もおらず頼りになるのは点字ブロックと盲導犬と助けとなる知り合いだけなのは視覚障害者が置かれている状況を表しているのだろう。現実には人はいるが果たして何人が手を貸すのか、存在していると言えるのかと。障害者であるために当初は目撃情報をまともに聞き入れられなかったのも存在を軽視される事の現れで(女性というのもある)、誰も気にしない被害者の家出少女達と重なる。マイノリティ目線がしっかりしている。

単純にエンタメサスペンス映画として見ても十分面白く、クライマックスのあの手この手を尽くした攻防戦は手に汗を握る。それと噂に聞いてた通りなかなかゴアなカットあり。下品なのではなくて殺害シーンなんかはゴアを入れず綺麗にやるのだけど、頭頂に刃物を押し組むところは非常に嫌な気分になれる。話は弟の死のトラウマ克服や最初は何の目標もなかった相棒の春馬の成長など犯人像以外で悪趣味なとこはないので安心。

この映画、韓国映画のリメイクでこれの一個前に中国版がある。話の筋が面白いのは保証されてるので、各国版でどう違いがあるのかいずれ見てみたい。