タコ社長

はちどりのタコ社長のレビュー・感想・評価

はちどり(2018年製作の映画)
4.2
1994年。
家族。友だち。恋。気まぐれ。病気。孤独。劣等感。先生。移ろいゆくもの。死。それから。
スケッチのひとつひとつが彼女の心に優しく留め置かれていく。痛みと苦しみはより強く。それでもそこに立ち止まらせないのは先生との出会いがあったから。愛情と畏敬の念、わたしの話は聞いてくれるけど自分の話をしようとしない。不思議な存在。自分のことをつまらない?と思ったときには手のひらを見つめて指を動かしてみて。思い通りに指は動く。気持ちが安らぐ。時には昔の知らない歌を唄ってくれたり。暴力を絶対許しては駄目だ!と強く励ましてくれたり。何も知らないのに勝手に憐れんではいけないと窘められたり。
この存在は絶対で手離したくない!と思う。けれど、もういない。唯一だったはずなのに。
不思議と自分のなかに息づく先生がいることに気づいた。気のせいかもしれないけどこの実感は何なのだろう。数ヵ月前とは違う景色の中に色んなことを失った今の私に寄り添ってくれてる。そんな気がする。
タコ社長

タコ社長