接続設定

ブラック・ウィドウの接続設定のネタバレレビュー・内容・結末

ブラック・ウィドウ(2021年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

公開から大分立ちますが、ディズニープラスにてようやく視聴しました。

ブラック・ウィドウの初登場はアイアンマン2で、十年以上経ってようやく主役の作品。

キャッチコピーや事前知識から、ブラック・ウィドウの過去のお話をやるのかな?と思っていましたが、時系列的にはシビルウォー後のお話で、ブラック・ウィドウのオリジンを振り返りつつ、その清算をし、エンドゲームやドラマシリーズに繋がっていく作品という位置づけでした。

ブラック・ウィドウ自体が、他のヒーローとは違い超人ではなく、ロシア(ソ連)モチーフの組織や登場人物が絡むことから、かなりシリアスめな作品な予感はしていましたが、実際に見てみるとシリアス一辺倒ではなく、これまでも披露してきたキレの良いアクションシーンの格好良さや、ソー:バトルロイヤルやGOTGあたりから磨かれて来たコメディも全体の雰囲気を崩さず、器用に組み込まれていて、バランスよく楽しめる作品に仕上がっていました。

アベンジャーズの時系列を理解していないと状況がちょっとわかりづらいので、(特にシビルウォー)いきなり所見ではややハードルがありますが、ロシアスパイの歴史や政治的背景は、そこまで大きく影響しすぎてはいないかなという塩梅。(勿論前知識があれば、より楽しめますが)

見ておいた方が良い作品は、ブラック・ウィドウ初登場のアイアンマン2、シビルウォーくらいは最低限抑えておいた方がいいのではないでしょうか。



シビルウォーは前述のとおり、見ておかないと、ナターシャの今の状況かよくわからないという点。

アイアンマン2に関しては、初登場時と今作とで、ブラック・ウィドウの描かれ方が変わっており、本作の重要なテーマとも関わる比較対象として見ておいた方が良い作品になります。




本作は、ブラック・ウィドウが自身を育成・束縛していたレッドルームという本作の敵組織からの解放が大きな主題であるとともに、男性あるいは男性的な社会からの解放といった点も、わかりやすく描かれている作品でした。

前述のアイアンマン2では、ブラック・ウィドウの描写が、アクションシーンは勿論キレがあり格好良いのですが、いわゆる「セクシーな女スパイ」という描かれ方をされていたのに対し、本作はそれが無く。

さらに、ナターシャと同じく、レッドルームの女性の戦闘員であるウィドウ達を、本作のヴィランであるドレイコフが支配的に扱い、モノのように使い捨てている。

といった点で、やはり解放が重要なテーマになっているのかなと思います。

何気にこれまで、MCUも白人男性の主人公や、その監督が多かったですが、年々 そこ一辺倒ではなくなってきているため、MCUにとっても、これまでのやり方から解放していかなければならないといった意味で、重要な作品だったのではないでしょうか。




本作、派手な演出や規格外の能力を持った超人的なヒーローがいないため、絵面としてのインパクトはそこまで分かりやすい派手さはありませんが、アイアンマン2より、よりキレのあるブラック・ウィドウのアクションシーンがやはり見どころで、格闘やチェイス、常人(といってもかなり超越した常人ですが)であるゆえに、危機的状況からどのように脱するのかといった、ハラハラ感に手に汗を握らせてくれます。

本作の印象的なヴィランとして、敵の能力をコピーする「タスクマスター」が登場するのも、実に素晴らしく、アクションシーンは多くないものの、ナターシャとのキレのある応酬や、その能力を直後にコピーして使いこなすといった見どころ、はたまたキャプテン・アメリカやホークアイを彷彿とさせるファンを喜ばせてくれる戦闘も見せてくれます。

個人的にはコミックスの方と、性格や描かれ方がちょっと異なるので、ちょっと寂しい点ではありますが、新しいタスクマスターが、本作だけにとどまらず、今後の活躍も楽しみになります。




コミカルなシーンの良さは、これまでのMCUでも描かれてきていた、チームや家族の素晴らしさとも通ずるところがあり、それをセットで味わい深いものとなっています。

本作で描かれる家族は、冒頭シーンから始まる殺し屋達の三年限りの偽りの家族であり、その情報だけ捉えると、とても複雑で業が深く、シリアスにならざるを得ないと感じざるをえませんが、私たちは所詮偽りの家族であると表面上は出しておきつつも、実際にコミュニケーションをすると普通の家族の日常のようになってしまうというギャップ感が面白かったり、偽りの家族ということで冷酷に切り捨てると見えて、実は大事にしている、大事になっているものであるという描かれ方が、実に感慨深くなっています。

特に、偽りの家族であったことは、今回のヴィランである支配的なドレイコフによるものであったため、そこから偽りの家族だっとしても大切なものになっていくという点も、重要なテーマである解放のひとつだったのではないかなと思います。

偽りの家族、実際に血のつながった家族じゃないけど、その部分が大切に描かれるといった展開は、個人的にはGotG2のスターロードとヨンドゥ、あるいはガーディアンズのメンバーを彷彿させるようで、じわりときますね。



最後に、本作を経て、エンドゲームに繋がっていくわけですが、エンドゲームでのナターシャの衣装チェンジの意味が回収されたり、ナターシャ自身の心境の変化、特にソウルストーンの場面での自身の行動に深く結びついているというハラオチが大きかったため、ナターシャ自身のオリジンであり、その清算と、シビルウォーからエンドゲームの補完という意味で楽しめる作品だったのではないかなと思います。
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