全編通して音楽がとても良い作品でした。映画の構造自体は、00年代辺りから流行り始めたクローズド謎解き系の潮流な気がしますが、本作はそこにかなり分かりやすい現実風刺のメタファーが乗っかっているという作品。
クローズドの場所の謎を解くことよりも、階層が変わる事での人物達の態度の変化が魅力的でした。それと、何か一つ持ち込むのに、何を選んだかのあたりも、多様な人間性を垣間見えて面白いかも。
クライマックスに向けての展開は、物理的には絶望に向かっているのに、意識的には希望に向かって挑んでいるという、逆向きな状況が印象的だったかも。向かっている先に困難があり、それを乗り越えると希望があるという物語的な構造としては筋が通っていますが、物理的に逆なところはちょっと新鮮。
謎が全て解決されないままエンディングを迎えるパターンもありがちですが、この謎がどうなったのか解決されてほしい!と願う部分、モヤモヤする部分も含め、この手のジャンルの見どころなのかなと思いました。
画期的に新しい作品ではないですが、全体的に質が高い作品でしたので満足。