JunichiOoya

燃ゆる女の肖像のJunichiOoyaのレビュー・感想・評価

燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)
3.0
私が拝見しているいくつかのタイムラインではとにかく絶賛の嵐で、オールタイムベストにという方も何人も。

とにかく絵が綺麗ですね。「絵」ってスクリーンに映し出されるその「絵」ね。
それに対して「肖像画」そのものはちっとも美しくない。最初にダメ出し喰うのも、二枚ものOKもらうのもどっちも。

写真が普及する前には絵がその役目を担っていただろうし、その絵はひたすらモデルにそっくりじゃなきゃならないし、個性とか表現とか以前に、モデルのこと大して知らない初対面の人が見たって、「ほほぉ、これはよく似ておるわい」の写実が求められるということでしょう。

そういう意味からあの「画家」には素養があったし、いよいよもってそこんところで追いつかない部分は「父親の実績」で補うことになる。「女には描くことが許されない素材がある。だから父の名前で書いたのよん」と強がる彼女のお気持ちにも斟酌したいけれど、なら最後までゴーストペインターのままでいなさいよ、とちょっと意地悪なことも思った。

で、物語としては、そうした「仮初の」写実を代替するものとして愛し合う二人の物理的な肉欲が対置されていて、そこは素直に素敵だなと感心。

そして皆さん仰るように一等素敵だったのは村祭りのシーンでしょうね。
召使のお腹が大きくなり始めて、ダッシュ&ターンのシゴキや強烈青汁でも効果がなくて、堕胎の相談に行ったあのお祭りでのコーラス。文字通り燃えるような恋に身を焦がす二人(片や歴戦の強者、片や神に身を捧げかけたおぼこ娘)と3人それぞれの立ち位置、思惑を、あの歌声が一気にアウフヘーベンという演出。

好きな映画なんだけど、ただ、シナリオはちょっと緩すぎたんじゃないかしら?
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