このレビューはネタバレを含みます
「なぜその絵が?」
燃える女の絵から回想される、画家マリアンヌと令嬢エロイーズの五日間の話。
夢のような映画だった……ワンカットごとの美しさもさることながら、チョークを走らせる音、絵の具を乗せる音、波の音、焚き火の音、息遣いや唾を飲む音、肌の触れ合う音などが聞こえてくる。視覚以上に聴覚を刺激される、切なくて素敵な作品。
神話になぞらえた別れや、視線が絡み合うことのないあのシーン。芸術的で美しい……。
終盤の展開はすべてが涙腺を刺激するのだけど、個人的に一番は最初の再会シーン。本のページを割る指先が、すごく官能的でどきっとしながらも、ページ数を見た瞬間に色々耐えられなくなって、自然と涙が溢れた。
悲しくてもどかしいけれど、観終わった後はとても晴れやかな気分に。
2021年初映画館、忘れられない体験になった。