鰻重

燃ゆる女の肖像の鰻重のレビュー・感想・評価

燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)
4.0
2020/01/05 劇場にて。

予告編が好みの雰囲気だったので気になっていた作品。
予告編鑑賞のあとで、エロイーズ役のアデル・エネルがロマン・ポランスキー監督(当時強姦で有罪判決を受けていた)の受賞に抗議したこと、シアマ監督とアデルが元パートナーであったことなどを知り、より興味が湧いて早く見なければ…!と思い立って新年早々に劇場へ。

ストーリーは至ってシンプル。
画家のマリアンヌのもとに貴族の娘・エロイーズの縁談のため、肖像画を描いてほしいとの依頼が舞い込む。
依頼主の母によれば、エロイーズは結婚を望んでいないため、画家であることを隠して近づき、肖像画を完成させて欲しいという。
マリアンヌはお目付役としてエロイーズとともに散歩へ出かけ、空いた時間でキャンバスに向かう日々。
散歩中に観察した記憶とわずかなスケッチから、どうにか肖像画が完成。エロイーズに正体を明かし作品を見せるものの、出来に納得できないと言われショックを受けるマリアンヌ。
エロイーズは描き直しのために自らモデルとして協力を申し出て、新たな一枚を描きあげてゆくのだがーー。

この作品は、一貫して静かである。
広い屋敷は人も少なく、部屋には暖炉の薪が爆ぜる音だけが響く。
外は切り立った岩場に吹く強い風、砕けて白くさざなみを立てる波の音。
だからこそ言葉も多くないこの劇中に音楽が現れたとき、どうしようもない高揚感にとらわれてしまう。

女たちが焚火を囲み、歌うシーン。
木の爆ぜる音も闇に吸い込まれてしまいそうな中で、女たちの声が重なり、歌を紡いでいく。焚火越しにマリアンヌを見つめるエロイーズの、視線の熱さ。ドレスの裾に火が移ったことにも気付かず、見つめ続ける瞳の切なさ。セリフもなくただ見つめられるだけなのに、強く真っ直ぐな歌声が大きく反響するのに合わせて心を直接揺さぶるような衝撃があった。

後半ももう少し丁寧に書きたいが、まとまらないので取り急ぎ。
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