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ポルトガル、夏の終わりのShinMakitaのレビュー・感想・評価

ポルトガル、夏の終わり(2019年製作の映画)
1.7

ポルトガル、シントラ。
世界的な女優フランソワーズ・クレモン(フランキー)が、夫ジミーと共に、この美しい町を訪れた。これは、彼女にとって最後の旅。だから、家族を呼び寄せている。ロンドンからは娘のシルビアが来てくれた。シルビアは神経質な夫イアンと思春期の娘マヤを伴っている。また、パリからは息子ポールが到着した。未だに独身のポールの将来を憂いているフランキーは、歳下の親友でメイクアーティスト・アイリーンをNYから招待している。ポールとアイリーンがくっついてくれたら素敵なんだけど…という思惑だ。また、フランキーの前夫ミシェルもやってくる。別れた後もフランキー&ジミー夫婦と親交のあるミシェルは、ゲイをカミングアウトして人生を謳歌している。

山頂で全員集合する夕刻まで、皆おもいおもいに町を散策するが…


「ポルトガル、夏の終わり」


以下ポルトガル、ネタバレの終わり


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これ、ちょっと変わった映画です。100分の尺の中で、事件が何も起きないんです。何も起きないんだけど、会話の断片から複雑なクレモン家の過去・現在・未来が垣間見えてくるという仕組み。フランキーが癌で余命いくばくもないこと、ポールがフランキーの実子で、シルビアはジミーの連れ子であること、そういった諸々が明らかになってから、最初の方の場面…フランキーとシルビアのブレスレットやりとりや、英語・仏語の使い分け…などを思い返すと腑に落ちるんです。ラスト近く、アイリーン&ジミーの姿を眺めるフランキー、そして全体を俯瞰するミシェルの双眼鏡という構図は、この一家の未来…ミシェル言うところの「フランキー後」を暗示しているようでした。
また、キャラたちの散策は、あたかも彼らが人生を彷徨しているさまにも思えるんですよね。1番若いマヤが遠出をして、広い海に出て恋愛を経て成長して帰ってくるというのを何の気なしに眺めているだけでは、その意味に気づけません。出会っては別れていく…散歩って、人生の縮図かもしれないな(笑)。

こんな地味な映画なのに、キャストが国際色豊か、かつ豪華なのもポイント。主役フランキーは、イザベル・ユペール。ジミー役は、俺が密かに英国のブライアン・デネヒーと呼んでいる熊型俳優ブレンダン・グリーソン。余談だけど、彼と先日亡くなったベン・クロス、2人の英国実力派舞台俳優が、なぜハリウッドのB級映画「乱気流 タービュランス」に出たのか不思議なんだけど、まぁそれはいいか。

アイリーン役は熟しても可愛いマリサ・トメイ。その恋人役は「恋愛小説家」のグレッグ・キニア。ポール役はベルギーの名優ジェレミー・レニエだし、ミシェル役はフランスの名優パスカル・グレゴリーです。英・米・仏・白と揃ってますね。

ラスト、日没を背に各々下りてくるラストショットが印象的。あまり評価は高くないけど、俺は好きな一本。
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