sacco

家族を想うときのsaccoのネタバレレビュー・内容・結末

家族を想うとき(2019年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

最初から最後まで、救いが無くて苦しい。

何が足りなかったのだろう。
お金はもちろん、家族で話をする時間、相談相手、適正な労働環境に関する法律の知識、行政からの保護や支援を受けるための情報…。
これらの、″あの家族”に足りなかったものは、便利さ•安さ•早さへの人々のニーズ、その要求に応えるサービス過剰よる効率主義、故の劣悪な労働環境と賃金体制、病院の数やケアに関わる人手不足など、”社会全体″の様々な問題に結びついている。
この映画にはそのあたりがリアルに描かれていた。

何よりも1番欠けていたことは、「家族(と自分)の幸せとは何か」という目線なのだと思う。家族の問題に向き合う時間すら作れず、充分な睡眠時間もとれず、暴漢に襲われて心身共にボロボロになりながらも「家族のため」と搾取されながら働くその先に、果たして本当に家族の幸せはあるのか。


早朝、愛する家族全員から反対され、ボロボロの体で仕事に向かうラストのシーンは、もはや何かに取り憑かれているようで、ゾッとした。
これは決して遠い国の架空の家族の話ではない。「幸せとは何か、その為にどう生きたら良いのか」という目線を忘れてはならない、と気付かせてくれる映画だった。
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