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小さな兵隊の教授のレビュー・感想・評価

小さな兵隊(1960年製作の映画)
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88分の上映時間の中に、非常に密度の濃い、情報量の多い映画。

「アルジェリア戦争」という当時のフランスのリアルタイムな背景。
第二次世界大戦後の、帝国主義からの離脱の為にアルジェリアの独立戦争を通したリベラリズムと女性性の複雑さを体現するアンナ・カリーナ演じるヴェロニカ。
国家、あるいは軍隊という父権的な加護によって醸成される男性性を体現するブリュノ(ミシェル・シュボール)の恋愛に中にも介在する「闘争」を描いている。

近年だと、黒沢清監督の「スパイの妻」を彷彿させる個人と国家の関わりと、男と女という人間の性による分断と。
支配と反発の構図が、ポリティカルさとポエティックな表現を混在させて「映画」に仕上げている。

全ての対立は、不信の感情と、不信を誘う「嘘」であり、利害と本音と建前の問題である。
そして、必ずしも「理」では行動できない複雑な感情を持つ「人間」をドラマの中でしっかりと描写している。

言葉は常に、嘘を孕み、抽象的に語る言葉は「詩的」に響くが、真意は嫌味な皮肉に満ちていて最高。
国家に対して個人が抑圧されるように、男と女の個人の関係には、抑圧された本音と建前がブリュノとヴェロニカの鏡を通した会話で描かれる。
それこそがまさに映画。

ジワジワと地味な嫌さを増大させていく拷問シーンも含めて、詩的で、濃密で、一筋縄ではいかない映画的興奮が高い。
表層的には「難解」に感じる部分というのを解き明かすには、やはり映画自体を浴びるほど観て得られる快感だという気付きもあった。
映画はとても厄介。でも本当に面白い。
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