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エターナルズのnetfilmsのレビュー・感想・評価

エターナルズ(2021年製作の映画)
2.7
 MCUのフェーズ3における『アベンジャーズ/エンドゲーム』はそれまでのシリーズを生温かく見守って来た私からすれば紛れもない傑作であり、野心作だった。『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』あたりからその萌芽はあって、それ以降は1作毎に異なるテイストの力作が誕生し、『アベンジャーズ/エンドゲーム』での予期せぬ悪夢のようなエンディングがあったからこそ、次に来た『アベンジャーズ/エンドゲーム』の大団円もあったように思う。だが今さら言うまでもなく、マーヴェル首脳陣のその後の全キャラクター卒業という決断には面食らったのも事実である。当たり前だが今まで築き上げたものをぶち壊すのは大変難しい。シリーズが下降線を辿っているならまだしも、特大ヒットを続ける中でそれらを停止するのは大変勇気の要る決断だった。費用対効果の側面を見れば、おそらく高騰する各人のギャランティを抑える意味はあっただろうと推測するし、長く関係性を維持すると権力は絶対に腐敗するので、アメリカのトップの映画会社の決断としては大変素晴らしかった。

 だがそうして始まったフェーズ4以降に私は今のところ、いまいち乗り切れていない。最初は『スパイダーマン』シリーズのように役者を若返らせて新版を作るのかと思いきやそうではなく、外伝的なエピソードをぶち込んできたかと思えばアニメシリーズもあり、全てが劇場公開ではないあたりもマニアではないが劇場には必ず観に行く程度のライト層には没入しづらい。要は配信サービスの「Disney+」に加入させる魂胆見え見えで、収支を見ながらいずれは劇場撤退の時を推し量っているようにも見え、大変由々しき事態だと思う。今回は7000年以上前の古代が舞台とされているものの、古代の描写は開巻早々のみで、あとは現代と数年前の往来ばかりしており、その時世の行き来も非常にわかりずらく、観ていて理解するのが大変だった。配役も主役級のキャストはアンジェリーナ・ジョリーのみで、他は多種多様な人種・性別の人物を選んで来ているもののそれぞれの見せ場もほとんどなく、消化不良の印象だ。一番キャラが立っていたのはマ・ドンソクだというのはアジア代表として見慣れているからだろうか?

 2021年を代表する名作『ノマドランド』を監督したクロエ・ジャオは、ヒーローものにあるまじき悲しい物語に地球の命運を託す。主人公のセルシ(ジェンマ・チャン)は2人のイケメン男性に真剣に言い寄られるというアメコミ映画らしからぬ導入部で、この世に生を受けて初めて一緒に青い地球を見たのがイカリス(リチャード・マッデン)であり、その時から2人の運命は決まっていたかに見えるが、まるでシェイクスピアの悲劇のように様々な事情が2人を引き裂く。ヴィラン以前に味方の登場人物たちも何せ数が多いのだがいかんせん、個々人の挿話で1本映画が撮れるような主役級の強烈なキャラクターはほとんどおらず、互いに厨二病をこじらせ過ぎているから笑うに笑えない。まず人間関係をある程度把握するのと同時に、物語を構成する用語を把握するのにもかなりの時間を要するので、集中力が必要だ。その上心なしか色味もわかりづらく、物語も色調も全体的にどんより暗く、曇っている。せめて強力なヴィランを全員で力を合わせて倒す物語なら滑り出しとしては良好だがそれすら求められない。『ノマドランド』でアカデミー賞を獲得する前にクロエ・ジャオ監督に打診していたマーヴェルの目利きは相当なものだが、ゲイや聴覚障害者ら細部の描写に苦心しつつも、残念ながらクロエとマーヴェルとは上手くマッチせず、大きな物語を語る才覚は持ち合わせていない印象だ。
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