まっつん

エターナルズのまっつんのレビュー・感想・評価

エターナルズ(2021年製作の映画)
2.5
MCU最新作。アカデミー監督であるクロエ・ジャオとのタッグであり、MCUの新基軸であるのは間違いない一作でございます。

えー、本作の話をどこからするべきか?ということに関しては凄く悩みどころでして。なので一旦は、この作品がもたらす「外部の反応」というのは脇っちょに置いておいて作品自体の話をしたいと思います。

なんかね….弱えなぁ…ってのが僕の偽らざる感想で。と言うのも、これは僕の理解力が低いことも多分にあると思うのですが、クライマックスに至るまで何もかもが判然としないんですよ。エターナルズの人たちは強いの?弱いの?人間性があるの?無いの?良い人なの?単に仕事人なの?そして、ディヴィアンツは悪い奴なの?そうでは無いの?(もっと色々あった気がする)ということがイマイチよく分からないんですよ。分からないお前が悪いんだ!もう一回目を皿にして観やがれバカ!死ね!と言われたら返す言葉もありませんが、本当によく分からないというのが正直なところで。2回見りゃよく分かるかな?とも思ったんですけど、2回も観たいと思うようなフックがないのもこの映画大きな問題だなと。

まずアクションですよね。これはホントに全然ダメだと思う。てか、ここ数年のMCUのアクションは「シャン・チー」以外はパッとしたものがないように思います。その中でも本作はダメな方だなと。というのも、あまりにバリエーションが無い。加えて、画面が暗い....特にイカリスですよ。こいつもっと色々出来そうなのに結局やる事と言ったら「目からビーム出す」「空を飛ぶ」「青姦」ぐらいでしょ?なんかこう....もう少し工夫を凝らして色々出来ないか?と。イカリスに限らず他のメンバーに関してもそうで、アクションにおいて「チームだから乗り切れる局面」とかが描かれないんですよ。それだとどうしても単調に感じてしまうんだよなぁ、僕は。たしかにチームのメンバー同士の「関係性萌え」みたいなとこはありますよ。そういうのすきでしょ?みんな?でもそれがアクションシーンにおいて、活きてるかと言われたら活きてないよねと。あと、これは何回でも釘を刺しておきたいけど、キャラクター同士の「関係性萌え」や、それを端緒にした「尊さ」みたいなことと、作品の出来不出来は全く関係が無いですからね。ということは言っておきたい。特にMCUの作品はそこと切り離して観ないといけないと思います。

あと画作りも、少しどうなの?と思いましたね。全体的に海だとか山とか「壮大っぽい」画ズラばかりなのはまぁいいですよ(てか最近そういう映画ばっかな気がする)。ただセレスティアルズだけはもう少し彩度を上げていただけないだろうか?原作知ってる方なら分かると思いますが、セレスティアルズってバッキバキの原色でデザインされた、観てると目が痛くなる感じの連中なんですよ(もちろんジャオさんが知らないわけないですよ)。それが何か...薄ぼんやりした色味のデカい人になっちゃってさ....ダメだよ!もっと信号機みたいな色にしないと!次は頼むよ!

そして、本当に嫌だったのはこっからで。まず、この作品が当たり前のように語っている前提にもう乗れないんですよね、僕は。「太古の昔に高次の文明=神(のような連中)が宇宙からやってきて人間に文明を授けたのじゃ!」という話って普通に頭おかしくないですか?っていう。端的に言って人間をバカにしすぎと言いますか、流石に鋤ぐらいは人間作れんだろ!っていう。別に現代人に比べて遥か昔の人が頭悪かったなんてことはないと思うんだけど。で、そっから何世紀にも渡って一貫して「人間はバカだ」っていうことで話が進むわけですよ。この「後退的なメンタリティ」は何なんだろうか?その代表例として用いられるのが、コンキスタドールの虐殺と広島への原爆投下。ここはハッキリとダメでしょ。このふたつが単に「象徴」や「ギミック」としてしか用いられないんですよ。これを観て「なんて人間は愚かなんだ!」って思うのは、その現場のことなんか考えてもいないエスタブリッシュメント層ですよ。現代的なPCに配慮するのであればそれは絶対やっちゃダメだと思うんだけども。そして「人間は救う価値があるのか?」問題ですよ。正直、またその話?って思ってしまって。アメコミって遥か昔にそこは通過済みだと思っていたんですが。「ウォッチメン」読めば分かるでしょうが。問答無用で「あり」なんですよ。今更そんなこと言ってんなよって感じですよね。そういった過程を経て「人間を救う」という話に一応なっているんだけども、その動機に人間の存在はないですよね。あったとしてもあくまでエターナルズのメンバーの個人的な動機に終始してしまうので、それって物凄く独善的というか、エターナルズの連中がとんでもなくお節介な人達にしか見えないんですよ。

と文句ばっか垂れてますけど、MCU全体の流れで考えるとやはり本作は避けては通れない部分があると思っていて。「エンドゲーム」までで「サノス編」が一旦は終了しましたと。そうなったらあと何やるのよ?と言われたら、セレスティアルズに代表されるコズミック・ビーイングの連中の話にならざるを得ないわけですよ。そして、今後出てくるコズミック・ビーイングたちのことを考えると、そりゃ本作で描かれたセレスティアルズなど比にならないほどの巨大な話になってくるわけじゃないですか。だって今後、確実にギャラクタスは登場するでしょ。あいつなんか惑星を丸々食って生きながらえてる奴なんだから、そんなスケールのキャラクターを突然出せないでしょ....っていうのは真っ当な判断だと思います。その中でクロエ・ジャオに本作を託したという選択も分からないではない。僕もクロエ・ジャオの映画って好きですよ。だし、彼女は単にアートハウス系の監督ってだけではなくて、筋金入りのオタクだったりもする。だから基本的にはめっちゃ分かってる人(分かりすぎてる節すらある)で、ある意味MCUに起用されるのも当然の帰結だと思います。クロエ・ジャオの良いところが出まくってる作品であることは疑いの余地がありません。

特に役者の皆さん。これは凄く良かった。というのもジャオさんって「役作りせずにそのまんまのアナタを出しなさい」って言うような演出をする人なので、ホントに役者その人としか思えないやつらばっかでね。特に、ドンソク兄貴ですよ。ハッキリ言います!この映画、ドンソク兄貴が出てたからまだ観れた….と個人的には思っております。ドンソク兄貴が退場してからはですね、ぶっちゃけかなりどうでも良くなってしまって、「一旦寝とこうかな…」なんて思っちゃったぐらい。もう気持ちいいぐらい、いつものマ・ドンソクでしてね。セレスティアルズを平手打ちでぶっ倒すあたりはエラく興奮してしまいましたよ。

そして、エターナルズのメンバーのダイバーシティについても言及しないわけにはいけないでしょう。ここに関しては、描き方自体は大変上手くいっていたと思います。このあたりは流石クロエ・ジャオですね。LGBTQ +のヒーローや、聴覚障害者のヒーロー、あとは子供などなど、あらゆる人が自分をエンパワーメント出来るようなヒーローがいる。ということは本当にいいことだと思います。映画がもたらすポジティブな側面を見れたなと。映画に限らずですが、最近のPC的な意識の高まりに対して、「ポリコレ棒がー!」とか言うアホがいますけど、ホントに死ねばいいのにと思いますね。確かに色々と過渡期ではあるので、個別のケースに対して異議申し立てをする。ということはありますよ。しかし、全体として「差別を無くそう」という方向に世の中が進歩していってることに何の文句があるのだろうか?別に色々と「気にしすぎ」になってるんじゃなくて、今まで「気にしなさすぎ」だったの!だったらアンタら「世の中差別が平然とまかり通ってもいい」って思ってるわけ?そういう人には「少しは大人になった方がいいよ」と言ってあげたい。

ということを前提として言わせていただくと本作に関しては「一言言ってよ...」って思ったんですよね。要はエターナルズってセレスティアルズに作られた存在なわけじゃないですか?これが普通の人間だったら何にも言わないんですけど、彼らはそうでは無いと。人間より遥かに高次にいる存在なんですよね。だとしたら聴覚障害があったり、ずっと子供なキャラクターに関しては一言欲しいですよね。もちろん「物凄い早いスピードで動くので耳がやられないようになのだ!」という設定があるのは分かりますよ。だったら劇中で言ってよ!と。なんでそれを映画観た後に補完しないといけないのよ?って思うわけです。スプライトに関してもそうですよ。そこで一言添えてくれさえいれば「またポリコレに配慮して!」なんてことをバカな奴等に言わせないじゃないですか!一言くれい!ジャオさん!

てなわけで、いいところもあるけど決して手放しでは喜べない作品ではありましたね。とは言え、コズミック・ビーイングが今後どう絡んで来るのか?という期待は膨らみましたので、観て良かったなと思います。