ゴミ箱島代表ひもる

カイジ ファイナルゲームのゴミ箱島代表ひもるのレビュー・感想・評価

カイジ ファイナルゲーム(2020年製作の映画)
1.0
今回は完全オリジナルストーリーです。また、福本先生が脚本を共同執筆しています。しかし、なぜこれが起こったのですか?もう話が大きすぎます。 『カイジ』は基本的にカイジと彼の仲間がギャンブルで人生を逆転させるという簡単な話です。しかし今回は、カイジ自身の生活をはるかに超えて国の存続のために戦っていて規模が大きすぎます。そのため、ありえなさ度は異常に上昇しています。社会や政治の描き方は幼稚で、中学生の考え方のようです。この部分をひとつひとつ掘り下げていくと、大変なのでやめますが、最大の問題は、作品『カイジ』の一番面白い部分であるギャンブルがとんでもなくつまらないことです。そもそも前の2作品でも3つのギャンブルが詰め込まれてうまく活かせてなかったのに、なぜ今回は4に増やしたのかわかりませんし、今回は原作の面白さがあった前の2作品と比べてかろうじて残っていた面白さがすべてなくなりました。
4つのギャンブルの最初のものは「バベルの塔」です。これは、最初に街のどこかに立っている棒の上に置いてあるカードを取るゲームです。勝者は、10億円未満のお金か、人生を変える極秘情報を入手できます。最初から10億は金銭感覚がおかしくなってます。まあ円の価値が急落した世界なので、私たちの金銭感覚とは違いますが。そのため、いくらお金を出しても大きさを感じにくいという欠点があります。それは千歩譲って置いとくとして、この「バベルの塔」は明らかに原作の鉄骨渡りを意識したゲームです。しかし、これは先着順の体力ゲームにすぎません。参加者同士の駆け引きは特にないので、ゲームとしてはとてもつまらないです。さらに、カイジがこのゲームをどのように攻略するかというと、棒がどこに設置されるかについての情報を事前に伝えるためだけに登場した大槻から聞き、棒まで隣の建物から行くための鉄骨を準備することです。カイジは、最初から圧倒的に有利なイカサマで勝ちます。どう見ても『カイジ』としてはダメです。カイジはいつも圧倒的に不利な状況からスタートし、それをひっくり返して勝つことでカタルシスを引き起こしましたが、今回はカイジがこれまでの敵と同じことをして勝つだけで楽しくないです。大槻を出したいのなら、嘘の情報を教えて、カイジをはめさせたほうが絶対いいです。それでも、この「バベルの塔」は物語の導入部分に過ぎないので、早く終わらせたいということで、1万歩くらい譲って放置しますがここから先は更にひどいです。
二つ目は「最後の審判」です。 「Family」「Friend」「Fixer」「Fan」などのつながりや資産を駆使して2人のプレイヤーが勝負し、お金を稼ぐゲームです。多分それは選挙を意識して作られたゲームです。自分の資産に加えて、どのくらいのサポートを得ることができるかという偉大な政治家的な勝負ですが、それはただのお金の積み合い合戦です。敵が仕掛けるのはイカサマではなく、権力を使った工作です。『カイジ』の面白さは、敵が仕掛けるイカサマを逆に生かした対策だと思います。しかし、今作ではそんなことはありません。カイジが取った唯一の対策は、彼が負けそうになったときに事前に与えられた10億をカジノで増やすことです。それができるなら、制限時間内ではなく、事前に増やでばいいでしょう。そのギャンブルもご都合的です。敵がカジノを閉鎖し、カイジがそれ以上お金を稼ぐことができないようにするのにひとつだけギャンブルを残すのは意味がありません。ギャンブルの攻略法をそれを教えるためだけの遠藤から教えてもらうのも、ご都合的すぎるし、ギャンブルの内容も酷すぎます。
そのギャンブルは「ドリームジャンプ」という3番目のゲームです。命綱をつけてジャンプし、10本のロープのうち1本を引くと勝ち、はずれると死にます。そして、このギャンブルの驚くべき戦略は、システムをハイジャックし、勝ったロープを前回と同じにする非常に適当な方法​​です。このカジノのセキュリティは、電源を簡単に落とすことができるほどガバガバですか?明らかに不正行為であるカイジの要求を簡単に飲み込むのはなぜでしょう。ツッコミどころだらけです。さらに、このゲームはカイジが自分自身をかけた本作唯一のギャンブルですが、彼が失敗した場合に彼が死ぬという緊張はありません。問題は、本作でカイジが自分をかけてギャンブルをしていないことです。実際、この「ドリームジャンプ」を除いて、カイジが負けた場合、今回のカイジに対するリスクはありません。特に「最後の審判」に関しては、カイジはプレイヤーではありません。プレイヤーは不動産王の東郷で、カイジは彼に雇われた協力者です。負けてもカイジにリスクはないです。これまで、負けたら地下に行ったり死んだりする大きなリスクがありました。しかし、今回は彼にリスクがありません。負けても、地下に行ったりもせず、死んだりせず、ただ普通の生活に戻ります。 「ドリームジャンプ」もこのザマです。これは本当に福本先生が考えた話ですか?カイジが多額の借金を抱えて返済を条件に協力しているというわけでも無いですし、今回のカイジは全くクズでは​​ありません。
当初、カイジは仕事せずギャンブルと飲酒ばかりしている全く役に立たない人でした。しかし、本作ではカイジが派遣社員としてきちんと働いていてお金がないというのは、不況だからです。 彼を100%悪いと言うことはできません。また、瀬戸利樹達若者集団はクズとも呼ばれていますが、機械に強いという技能を持ち、両親の工場を再開することを目標としています。 今までの『カイジ』で言及されている無気力、無能力、そしてお金のないというクズとは根本的に違うと思います。 『カイジ』のテーマのひとつは「自業自得のダメ人間たちでもまだ人生捨てたもんじゃない」ということだったと思いますが、今回は「クズ」の定義が曖昧になっていると感じました。 そのような『カイジ』らしくないところは言いだしたら、終わりはありません。 一つずつできないので、「最後の審判」に戻りましょう。
カイジと彼の仲間は、ガバガバの「ドリームジャンプ」で稼いだお金で逆転を目指します。最終的には「Fan」、つまり会場の観客からどれだけの投資が受けられるかということになります。ここで重要なのは、「Fan」の支持を得る方法です。対戦相手の黒崎は、派遣王と呼ばれる派遣事業のトップです。彼はカイジや他の多くの派遣社員を不当な補償で働かせていた人でした。だから、派遣社員たちと黒崎の立場を逆転させる構図自体は良いと思います。その場合、それは「カイジ」のテーマと言えます。黒崎はこのギャンブルで有利な状況にあります。そのまま黒崎に投票すれば、とりあえず儲かります。しかし、カイジの行動に感動し、自分の利益ではなく黒崎に報いるために東郷側にお金をかけました。人間は自分の利益を最優先し、そのために人々を追い詰めて裏切ることをいとわないと悪役たちは唱えます。しかし、カイジは「いや、そうじゃない、自分自身を捨ててでも人に救いの手を差し伸ばすことができる人間もいる」と主張するします。それを言い続ける作品が『カイジ』です。つまり、この「最後の審判」は、そのような『カイジ』にふさわしい決戦であると言えます。しかし、この流れでは、東郷側が勝ちそうだから、観客はただ入れたように見えます。それはお金のために動いたということです。これは人々がお金でしか動くことができないという結論になってしまいます。お金以外の目的でこういう風にしなければ意味がありません。それは、カイジシリーズの「人間にはお金よりも大切な何かかがある」というテーマを否定するようなものです。これが最終章であることは絶望的です。
そして最後の「ゴールドジャンケン」はもうひどいです。まず第一に、ゲームの規模は「最後の審判」に比べて圧倒的に小さく、これは最後の戦いのクライマックスとしての盛り上がりを欠いています。ルールも正直ガバガバです。 3試合に1回は金の球を持ってグーを出さなければならなく、ある意味「限定じゃんけん」ですが、通常のルールでも疑問は多いのに、カイジと福士蒼太演じる高倉との対決では、変則ルールでやったのでさらによく分からなくなります。結局のところ、ゲーム自体は私が予測できる範囲でのみ進み、興味深いものは何もありません。ボールを持っていないのでグーを出さない、そのような単純な心理戦しかありません。ゲーム自体はとてもシンプルなので、予想以上の展開にするのは難しいようですが、それをやってこそ面白くなるはずです。 Eカードは簡単なゲームですが、あんなに素晴らしい心理戦を見せてくれたのは福本先生でした。カイジの逆転を誰も予測できないと思います。この「ゴールドジャンケン」は、福本先生が時間をかけて原作でやったら、かなりのギャンブルになった可能性もあります。しかし、今回は驚きがないので、まったく面白くありません。また、このゲームをする意味も特にないです。このゲームの結果も実はこんな感じでしたと二転三転し、結果このゲーム自体は単なる茶番になりました。このゲームに限らず、実際は後出しじゃんけんを繰り返しただけなので、今回は全く感動しませんでした。結局、勝負の決め手は「印刷所がすべてやってくれました」でした。舐めてるんですか?それは投げたしただけでしょう。『デスノート』の「ジェバンニが一晩でやってくれました」以上のものです。個人的にギャンブルの部分に少し不満がある『賭ケグルイ』は滅茶苦茶良かったように思えてきます。とにかく、このように、一番の魅力のはずのギャンブルはすべてひどいものでした。
この時点で作品として破綻していますが、演出、演技、音楽など他の要素への褒める要素もほとんどありません。 せいぜい藤原竜也は称賛できます。 でも残念ながら、今回は香川照之のような藤原竜也と並んで演技できる人はいません。 福士蒼太は正直力不足で、吉田鋼太郎だけがバランスが取れているように見えましたが、直接の対決ではないので意味がありません。 そして、とにかく俳優がうるさいです。 とりあえず大きな声を出せば、この監督はインパクトを与えていると思っていませんか? 「最後の審判」時の新田真剣佑の感動的「げ」の話も薄く、過去作のキャストを出したり、カイジにビールを飲ませたりすればファンに喜ばれるという考えが透けて見えます。オチはあまりにもひどすぎて、やりたいことがよく分かりません。
今回の最悪のキャラクターは関水渚演じる加奈子です。カイジと同じ理由で東郷に雇われた協力者ですが、ストーリーでは特に役割がないので、そもそも必要なのかと思いますが、最後は最悪なことをしました。 「ドリームジャンプ」で遠藤から情報を聞いた後遠藤は、カイジの報酬を自分に与えるように言います。そもそもそういう条件を飲む必要はなかったのですが、それを受け入れます。一応カイジにお金をもらえるチャンスを与えましたが、簡単に裏切って遠藤に渡しました。最後に最悪の裏切りです。彼女に徳があるわけでもなく、彼女はほんの少し前まで完全にカイジの側にいましたが、彼女は突然裏切りました。本当に最悪です。カイジは最後に裏切られて一文なしで終わります。適切なイメージだけでやったので、最後はこんなに杜撰だったと思います。少し偽善的かもしれませんが、カイジが稼いだお金を貧困に苦しむ人々に与えるのは良かったのではないでしょうか。はっきり言って、この話は政治家の横暴を止めましたが、日本の格差問題については何も解決していません。もしそうなら、政治家が貯めたお金を貧困層の保護のためだけに使って日本経済を再建するという選択肢はなかったのでしょうか。カイジが最後に金持ちになることはいいとは思いませんが、それをもっと綺麗に終わらせる方法はたくさんありました。結局のところ、カイジはこの物語を通して何も得ず、何も失いませんでした。そのような最終章では全く無意味な一作です。