フライ

蟹の惑星のフライのレビュー・感想・評価

蟹の惑星(2019年製作の映画)
3.8
多摩川河口の小さな干潟に住む、小さな蟹の生態や、どう言った形で環境や生態系に影響しているかを教えてくれるストーリーは、吉田唯義と言う個人研究家の素敵な人柄と素晴らしさ、同時に、日本における研究、調査、観察の危機的状況を教えてくれるドキュメンタリー。

多摩川にある小さな干潟で、一般の人なら目も止めない、見てもカニだ!で終わる小さな蟹を、知人から進められ好奇心から13年以上調査、研究する吉田唯義さんのドキュメンタリーだが、思わず引くレベルの凄さが。個人でここまでやるのかと思える蟹の研究は、視点の面白さや探究心の凄さ、レベル高さにとても驚かされた。
東京ドーム2個分の小さな干潟に何種類も蟹がいて野鳥の宝庫にもなっている事に驚いたし、東京湾の内側にある干潟が全く無関係とも思える東日本大震災の影響を受け蟹の減少を引き起こしているという事を、調査、観察から見い出している事には驚かされた。

もし吉田氏が何らかの理由で辞めてしまった場合、この研究は途絶えてしまうが、本作きっかけに何かを見出した人が改めて吉田氏の資料を参考に、繋げる事は出来るだけに、世に知らしめてくれるこのドキュメンタリーに素晴らしさを感じた。
誰もやらない研究をする事は、とても大切だし、いつか何か大きな発見や未来の希望になる事すら有るだけに、とても素晴らしいと思えた。何故ならノーベル賞受賞者が残した言葉が、正に吉田氏の様な人の大切さを、ものがたっているだけにとても尊く感じるし、貴重に思えた。

製作当時83歳の吉田唯義さんの地道な研究は素敵に思えたが、視点を変えて観ると日本の人口減少や税収減、企業衰退が、利益優先の研究しか出来なくなってきている今の日本に、基礎研究含め、目の届かない大切な部分が失われつつある事を教えられているように思え、とても辛く感じた。
とは言え吉田氏にはこの素晴らしい研究を少しでも長く続けて欲しいし、最近生物研究に関心を抱く子供も多くなっているだけに、本作きっかけで関心を抱く人がいたらと祈ってしまった。
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