中盤までは精神疾患の妄想による込み入った在り来りな混乱系ホラーかと少し軽視して見ていたが、恐怖演出の斬新さと救いようのない展開に、ホラー作品としてだけでは無い面白さを感じ、かなり楽しめた。
暗い家の中で少女ケイリーと弟ティムは、銃を持って徘徊する父親から逃げるように部屋から飛び出すが、そこには気味の悪い女性が。そしてケイリーに銃を突きつけたのは、大人になった弟のティムだった…
21歳になったティムは、11年間精神療養施設に収容されていたが、父親殺しの罪を認めた事で退院する事に。そして担当医からは今後も回復治療に専念する様に言い聞かせられていた。
ケイリーは、婚約者と共にアンティークのオークションをする会社を経営していたが、そこには'ラッサーの鏡'と言う少しヒビの入った荘厳な姿見の鏡が競売により落札されていた。同日、ケイリーは退院した弟のティムを迎えに行き、亡き両親の遺産小切手やアパートの資料を渡す。そこでティムは、これ迄ケイリーの面会を拒んでいた事を告白するが、ケイリーは再会した事を喜ぶと同時にラッサーの鏡を見つけた事を告げ、困惑するティムに11年前に約束した'ラッサーの鏡'を落札者に渡る前に葬る事を伝えた。
11年前、両親と共に豪邸に越してきたケイリーとティム。父親のアランは、自室の仕事部屋に'ラッサーの鏡'をインテリアとして購入。アランと妻のマリーは、とても仲のいい夫婦だが、引越し後アランは気味の悪い女性を見かけたり、マリーの育てる観葉植物が枯れたりと不気味な出来事が。ある日ケイリーは、アランの仕事部屋に知らない女性が父親と一緒に居るのを見かけ、その女性は誰なのか家族が居る場で尋ねるが、アランから帰ってきた言葉は、'私も知らない'と言う返答だった…
ケイリーは婚約者に、鏡の修復をすると嘘をつき昔住んでいた家にラッサーの鏡を運び入れる。そしてティムを家に呼び、ケイリーは、ビデオカメラに向かってラッサーの鏡を葬る為の準備や経緯、そして過去ラッサーの鏡が起因すると思われる恐ろしい出来事を説明し呪いの鏡である事を検証して行こうとする。ティムは入院生活で得た経験や知識からケイリーに自制するように説得するのだが…自体は刻一刻と悪い方に変化していく…
ジュマンジで滅茶苦茶可愛いと思ったカレン・ギランが、姉ケイリー役として出ていた事に終わってから気付き色々な意味で驚いた。
過去と現在の出来事を交互に展開しながら、おかしくなって行く両親と混乱する姉弟、そして現在進行形で大人になった姉弟が見る妄想とも幻覚とも取れる恐怖演出は、かなり斬新で恐怖を感じつつも作品としての巧妙なストーリー展開にとても面白さを感じた。特におかしくなって行く両親の狂気演出と鏡の呪いとしての霊的な怖さを絶妙なバランスで見せていく2つの恐怖演出が秀逸な上、そこに姉弟の経験している過去と現在が一体化して行く恐怖も重なり、これ迄見た事の無い構成は、ホラー作品としてだけでは無く、ミステリー要素をふんだんに盛り込んでいるので、とても楽しめた。更に自分の苦手とする痛々しいシーンが所々出てくる為、怖さを盛り上げてくれたのがとても良かった。
かなり入り組んでストーリー展開する為、頭の中を整理しながら鑑賞しないと見ている側も混乱しかねないが、しっかりと恐怖演出を咀嚼しながら鑑賞すると、秀逸なミステリーも味わえる上、途中で分かる絶望と救いようの無い恐怖、胸糞なラストなど想像以上に楽しめる作品だった。
昔、中古の鏡だけは絶対買わない方がいいと知人に言われた事が有り、本作を見ながら思い出したが、それが一層個人的な恐怖を助長してくれて楽しめた。
是非続編を観たいと思えるストーリーだったが、未だに製作されてない所を見ると…少し残念。
純粋なホラーが好きな人には、もしかしたら楽しめない場合があるかも。ただ、ホラーとミステリー両方好きなら、かなり楽しめるかと。鑑賞するなら体調を万全にして集中出来る時をオススメします。