フライ

フレンチアルプスで起きたことのフライのレビュー・感想・評価

4.0
この映画を夫婦で鑑賞したら、滅茶苦茶気まずい状況に陥る可能性があるシュールなコメディ映画。
要所で笑いを誘う展開は、心の底からは笑えない苦笑いの連続で、ある意味重い内容にも感じるストーリーに見終わって思ったのは…似た者夫婦かな…。

スウェーデンからフランスの高級リゾート地、冬のアルプスに、仕事中毒のトマスが5日間の休暇を利用し、妻のエバと娘のヴェラ、息子ハリーの4人で休暇を満喫する為、訪れていた。雄大で美しいアルプス山脈でスキーを満喫する4人は、ここぞとばかりにリーダーシップを発揮し、家族サービスするトマスの行動もあり、楽しく過ごしていた。
初日はスキーの疲れも有り、大きなベッドで夫婦を中心に家族4人で川の字で熟睡するが、夫のメールの着信音で目を覚ますエバ…。その日の夜は大雪が…。
二日目の昼、高台にあるオープンデッキで沢山の人がいる中、昼食を摂る4人。人為的に雪崩をおこす爆発音で発生する雪崩に、イベント感も増し周囲は歓声を上げカメラで撮り始めるが、エバや子供達は、迫る雪崩に怯え始める。トマスは、プロの仕事だからと家族に言い聞かせスマホで撮影するが、雪煙が壁の様に押し寄せ、他の客は逃げ出し、トマスも他人を押しのけ一目散に逃げ出した。雪煙が消える中、エバは2人の子供をだき抱えその場で怯えていたが、トマスが居ない事に気づく。周囲の人達も戻る中、最後に'大丈夫か?'と人ごとの様にトマスが現れるが、3人からは何も返事は無かった…。ホテルの外では連日あの忌まわしい爆発音が響く中、トマスにとって、家族3人にとって地獄の様なバカンスが始まり、現地で知り合った女性や、友人達まで巻き込んで行くのだが…。

高級リゾートで家族揃って楽しいバカンスの筈が、素敵な夫であり父親のトマスが、実は軽薄で情けない男だと露呈するある意味変則的な悲喜劇作品だが、殆どが苦笑いの連続と言う独特なコメディー映画で、中々考えさせられるものも有るのだが、ラストにはシュールな衝撃と最高の苦笑いが。
'旅行に行くと本性が分かる'と言う言葉を表現した様なシュールな内容で面白かったが、トマスの追い込まれて行く展開は、自業自得と言えば自業自得だが、途中からいたたまれなくなるほど可哀想な状況に。雪崩の後の空気感は観ていてストレスを感じたし、その後の悲惨な状況は、同性だからこそ感じる男のペラペラのプライドを見る辛さが余計ストレスに。特に妻エバの追い込み方が尋常では無いので、自分自身の遠い昔子供の頃、イタズラして嘘を付き、先生や友人に追い込まれた辛い思い出まで蘇って来て、MAXストレスに…。
美しい景色と、緊張感を煽るクラシック音楽が素晴らしいが、これコメディーなのか?とも…。
軽薄で情けない夫と、ねちっこくて陰湿な妻と言う構図が面白いが、ラストこんなこじつけたハッピーエンド?かと思いきや、まさかの妻エバの行動と夫トマスの態度に、衝撃と言うか、嫌らしさや皮肉が存分に描かれていて、確かにシュールなコメディーだなと…一番の被害者は二人の子供…
発想の素晴らしさを感じる作品はたまにあるが、本作は一見有りそうな出来事を、思いも寄らない斬新な視点で描かれたストーリーでかなり楽しめた。

ねちっこいストーリーに、斬新な面白さは有るものの、声を出して笑える事を期待すると梯子を外されるし、人によってはストレスを覚えるかも。それでも人間ってこう言うもんだよね!と、諦めや、開き直って見ると中々面白いので、興味が有れば是非。
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