こなつ

Winnyのこなつのレビュー・感想・評価

Winny(2023年製作の映画)
4.0
2002年自ら開発したファイル交換ソフト「Winny」が社会問題化し、2004年に京都県警に逮捕された天才プログラマーの金子勇さんの実話を映画化。

ソフトの開発者が逮捕されるのは世界でも異例だった。それなのに何故京都県警は、金子さんの逮捕に踏み切ったのか?著作権問題やウィルス蔓延で個人情報を抜かれたり、様々な問題を起こし、最終的に開発者を逮捕しなければ収拾がつかなくなっていたのか?

ネット史上最大の事件は、当初警察の不当なやり方で起訴され、第一審で有罪になったが、彼の無実を強く信じるサイバー犯罪に詳しい弁護士・壇俊光先生とその弁護団と共に7年間の月日をかけて2011年無罪を勝ち取った。しかし、その2年後の2013年、金子勇さんは急性心筋梗塞で突然この世を去る。42歳の若さだった。

不世出の天才プログラマーの死は、日本のIT開発の未来に大きな影響を与えているに違いない。金子さんが逮捕されていなければ、その7年間の間にこの日本でも私達が新たに見ることが出来た画期的なITプログラムがあったかもしれないのだ。

アメリカでは2004年にフェイスブックが創業され、2005年にはYouTubeが開発されている。

金子勇さんを演じた東出昌大さんのストイックな役作りが凄い。弁護士の壇先生やお姉さんに映画の中に勇さんがいたと言わせた本人にそっくりな動作や顔つき、体型は、まさに本物。エンドロールで流れた本人のインタビューで私達を驚かせる。天才だけど世間知らずで、警察の周到な罠にはまっていく金子勇さんを見事に演じていた。

弁護士の壇俊光先生を演じた三浦貴大さんの演技にも終始引き付けられた。当時を振り返りながら壇弁護士が細かい動きまでチェックして回想したというぬくもりのある演技が胸に響く。

映画の中でのもう1つの事件、愛媛県警の裏金を内部告発した仙波敏郎巡査部長(吉岡秀隆)の話。県警の上層部が否定する中、ウィルスに感染したPCからWinnyによってその裏金の証拠資料が世に出てしまい、彼の告発が真実だとわかる。これもまた当時新聞を騒がせた実話だから凄い。

この作品を観て、理不尽に国家組織や司法に潰されそうになる人々がどれほどいるのかと悲痛な思いになった。それでも諦めず権力やメディアと必死に戦う人々もいるということに、救われた気持ちにもなった。
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