真田ピロシキ

音楽の真田ピロシキのレビュー・感想・評価

音楽(2019年製作の映画)
4.0
映画を見たいが風邪引いてて体調が良くなく、気楽に見れそうなのを探していたら71分しかないこれが向いてると思い選択。3人のヤンキーが思いつきでバンドを始める話で全く楽器を触ったことのない奴らがやる音楽なのでさぞシンプルな音なのだろうと思ったが、想像以上にシンプル。バンドを古武術という名前にした彼らは校内に古美術というえらくクラシックなフォークバンドがいるのを聞きつけて強引に彼らの音楽を聞き自分たちのも聞かせるのだけれど、古美術のボーカル森田は本心から「ロックの原始的な衝動を感じさせる」と感動してて、あまりピンと来なかった自分にはイマイチノれず失敗したかなと思った。

しかし退屈でもないので見続けていたら町内で開かれるフェスのチラシを配ってても全然見向きされていなかった古美術が覚醒。ハードになって道行く人も私の興味も掴む。フェス当日、主人公の研二はバンドに飽きてやめていたのだが、会場に他校のヤンキーからの妨害をすり抜けて向かいステージにリコーダーを持って飛び移る。そして奏でるベース、ドラムとリコーダーの演奏。このビートがかっけえ。自然と体が動く。熱狂は前のステージで失敗して落胆してた古美術もステージに上がらせて高まるグルーヴ感!私の体も更に動くぜ。ロックを題材にした映画は多数あるが、演奏者の物語性を描くのでなく、ここまで奏でられる音を主役として表現したのはそうないように感じる。ロックが好きな人なら是非見てほしい。

アニメーションはエモーショナルな高揚感や実在感のある町並み描写がどこか湯浅政明っぽくて良い。動きは『花とアリス殺人事件』でも用いられた実写の動きをトレースするロトスコープで、演奏シーンが本当にライブ映像見てるようだったのはそういうことか。本業の声優を起用してないのも最初の頃は素人臭さが鼻についていたが、作品世界に引き込まれる内にケミストリーを起こしてて、決まった型通りに上手くなるのではなくて自分のビートを奏でられているのが本作らしい演出。でも竹中直人は結構声優やってるのでこの中でちょっとした安定感を見せていた。