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音楽のKHのレビュー・感想・評価

音楽(2019年製作の映画)
3.6
年間ノルマ60本中。2022年1作品目。
『音楽』観させて貰いました。
ストレートすぎるタイトルと、不釣り合いななんとも描きやすそうな雑い絵柄に惹かれたと言われればそれだけです。

内容は至ってシンプルではありますが、作品自体が七年という歳月をかけて、たった一人で描き上げたというから驚きである。
またオタワ国際アニメーション映画祭のグランプリ受賞も果たしており、
その内容は楽器を触ったこともない不良学生が思いつきでバンドを組むところから始まるロック奇譚。
となっておりますが、本当にその通りでした。

まずはネタバレなしで率直に思った事を述べたいと思います。

『好きか嫌いかと言われれば、個人的には好きではあります。ただそこから何かを得られたかと言われれば少し難しかったようにも思います。確かに笑えるシーンみたいなのは多かったですし、色々考えてみると深いなぁと思えなくもない部分が見て取れる気もしないでもないですが、
作品としては少し間が長く、この部分を一体どう見ればいいのだろうかと感じる部分も多く、また多くを語らない主人公含めた不良達にヤキモキしたりもしました。
また、最終的に受け取るメッセージみたいなものも多く解釈は出来ますが、個人的にはあまり好きではなかったです。が、
この作品をたった一人で描き上げた執念みたいなのには脱帽しました。なんでそのようなことになってしまったのかは別として、
そこに関しては間違いなく偉業だと思いましたし、1時間のアニメーションを一人で描くと七年はかかると言うのがわかっただけでも多分今後誰にも出来ないだろうと思います。』

アニメーションもそうですが、声を担当している人も有名な方が多く、特に良かったのが竹中直人さんの声でした。やっぱり特徴的で、渋い不良の役なのに何故か相手にされないというダサい一面もあって、マッチしていたように思いました。

またここからはネタバレありきでの感想になりますので、まだ見てない方はここらで戻っていただくとして、

多分10人いれば10人思う事が違うだろうというジャンルの作品ではあると思います。
また、この作品を素晴らしいと思う人も、ダメだという人もいるとは思いますが、多分僕はその中間にいる部類です。
シンプルに内容は楽しめましたが、感動したかと言われれば、この作品を一人で作ったと言われた時の方が感動が大きかったように思います。
また、では何故一人ででもやり遂げたかったのか?を考えればもう一度この作品を見なければならないような気もしております。
それを踏まえた上で、何故僕にとってこの作品がそこまで響かないかと言われれば、それは僕が音楽をやっている部類の人だからだと思います。

いや、むしろ音楽をやっている人でこの作品を評価する人も一定数いるとは思いますが、
個人的にはラストに関して、思うところがありました。
きっかけはひょんな事からではありますが、
研二は毎日が退屈で、何か日常に新しい刺激を求めていたように思います。
その刺激はもはや喧嘩のようなものではなく、やったこともない音楽という世界に飛び込む事になるのはわかります。

フェスも経験して、最後の最後に叫びたい魂の声のようなものも出たかと思いますが、
そこで燃え尽きてしまったのか、彼にとってもう音楽はこれ以上熱くなれないコンテンツになってしまったのか、
次に研二を熱くしたのは恋愛に変わってしまったようで、そのままエンディングになります。
個人的に研二の音楽性は原初も原初、まるで原始人が偶然音の出る器具で奏でたことによって出来たような音楽であり、
その音楽がもともと人間を構成しているDNAにもともと組み込まれたような刺激を持って、
『なんかよくわからないけど、いいじゃん』
という音楽を確立した。

また音楽オタクの『古美術』森田はその音楽を聞き、自分が何を聞いても違うと感じていた、自分に足りないのはテクニックやメロディではないこういう原初の音楽のパッションのようなものだ‼︎と覚醒したりもするが、

僕自身音楽は常に進化をし続け、今なお進化し続けてきているものだという気持ちがありますので、
音の出し方もわかってない退屈な不良が奏でる音楽を音楽だと断ずるにはちょっとそこまで心が広くはないんです。
彼らの音楽はあくまでもテキトーであり、
なんとなく生まれたものであり、彼らなりに一生懸命ではあると思いますが、不良が突如思いつきでやれたにしては持ち上げられすぎのような感覚を覚えてしましました。

ので、作品としては面白かったですが、
僕は魂さえあれば、テクニックとかはどうでもいいんだよ‼︎という音楽があまり好きではないので、
このような点数に繋がったという感じです。

落ちこぼれ達のワンスアゲイン系で言ってくれれば、不良達が本当に汗水垂らして練習して、挫折して、それでも努力して、フェスに臨んで初めて僕はそれがそのまま評価につながる部類の人間なんだなぁと思いました。
つまりは偶然生まれた天才的な音楽よりも、努力によって滲み出た泥臭いロックの方が個人的には好きなんだと再確認できました。

これを見る他の人はどう思うのか、その辺も気になるところ、もう一度見てみたいと思います。
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