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シャイロックの子供たちのKHのレビュー・感想・評価

シャイロックの子供たち(2023年製作の映画)
3.8
2024年度の年間ノルマ70本中36作品目。
見させて頂きました。

さーて休みの日だしなんか見るかとザッピングしていたら
目に入った『池井戸潤』の文字。
そりゃあ僕だって半沢直樹くらいは見ているわけで、今回の対戦相手は君に決めた‼︎という感じでの視聴となります。

また、デカデカと阿部サダヲが出ているのは確認しましたが、それ以外は全然知りませんし、『シャイロック??』というのが何を指す言葉なのかも知りません。

とにかくほとんど頭に何も入れずに、
しかしながらある程度は脳内偏差値も高めに設定した上で臨みたいと思います。

まずはネタバレなしの率直な感想をば述べます。

『非常にわかりやすく、またかなり考えさせられるお話でした。
結果的に終わってみたら実に池井戸潤らしい作品だなと思うと共に、
ラストについてはしばらく考える必要があった様に思います。
そういう意味では、半沢直樹みたいに巨悪に立ち向かうサラリーマン‼︎というわけではなく、タイトルにある通り
この場合の是非は果たして。という様な作品でした。

また、普段お目にかかる機会の少ない銀行員という仕事がいかに大変かを感じる事のできる作品とも言えますし、
常に高額な大金を取り扱うプレッシャーや、
営業としての責任や数字に追われる職業だという事を知れる作品とも言えます。

そしてなんといっても、池井戸作品に上戸彩は最早勝利の条件とでもいうのか、非常にマッチしていました。作品を支える役者陣も非常に好意的に見える人選だった様に思います。
とりあえずもしアマプラに入ってる人がいるのであればこの機会に是非、
派手ではないけど、邦画らしい良作と言えます。』


また、ここからは作品のネタバレに触れますのでまだ見てない方はご注意を、


まず、作品の冒頭。

佐々木蔵之介夫妻が『ベニスの商人』の舞台を見るところから始まります。

実のところ、僕は当然ながらシャイロックも
ベニスの商人も知らずに生きておりましたので、ここで書くのはあくまでも後々に調べた事です。

作品の内容として、いかにも強欲な高利貸しとして登場するシャイロックを断罪する内容ですが、

実のところ、金を貸した結果、期日までにその返金がないのは事実であり、
彼は契約書に基づいて、返金がない場合は肉1ポンドを与えなければならないという条件に了承したのもアントーニオであり、
何故か、それを実際に取り立てようとしたシャイロックを非難する物語ではありますが、

映画の冒頭でも少しだけそれに触れているのが印象的でした。
カイジなんかを読んでいても思うのですが、
何故かお金を持っている人を悪として描く様な作品は多いですし、
ベニスの商人に関しても、その当時、高利貸しをしているシャイロックは当然ながら
ユダヤ教徒であり、お金を扱う仕事を侮蔑的とする作為的な部分がある様にも感じます。

つまり、このベニスの商人というのは
意図的に高利貸しをしているユダヤ教徒を
強欲な奴と断罪し、愛のために借りた金を踏み倒したアントーニオは正義としている一面も含んでいるんだと感じました。
また、この映画のタイトルは

『シャイロックの子供たち』であり、

その子供たちという部分が一体何を指す言葉なのかで割と受け取り方が変わってしまうのではと感じました。
一応それを1・2に分けてみます。


1.実際にベニスの商人に登場する『ジェシカ』というシャイロックの娘を指す意味。


2.後の世界で金貸し=銀行員を指す意味。

個人的には2かなと思います。理由としては
ジェシカは純真であり、冷酷非道な父親を嫌って駆け落ちしている背景があるので、
今作との関わりが薄いと感じたためです。

よって、シャイロックの事件から数100年の時が経って、銀行員となった子供たちは
彼から何を学び、どう仕事をしているのかという作品と言うわけです。

作中では仕事のせいでノイローゼになり、遂には神社で狛犬を取引先の社長と思い込んでしまう様なシーンがかなりショッキングでしたが、仕事に対する圧力にしてはかなりのインパクトがあるシーンでした。

また、彼をそこまで追い詰めてしまったと悟った渡辺いっけいが一緒になって狛犬に挨拶をするのが非常に皮肉めいてて良いシーンだと思いました。

結果的には橋爪功と、柳葉敏郎が裏で組んでいた事により、この大掛かりな詐欺が展開され、それに佐藤隆太が巻き込まれるという内容ではありましたが、

内容はむしろもっと複雑で、佐藤隆太がこの詐欺に加担したり、また、銀行での100万円を盗んで利子の支払いをしてしまう背景に、

橋爪功に以前1000万もの金を受け取ってしまっていたことが発覚する。

また、監査というか、内部調査に入った
佐々木蔵之介も同様に、過去、銀行の金をギャンブルに使い、勝負に勝って得た金を銀行に戻した事があり、
その現場を柳葉敏郎に抑えられている。

また、最終的には佐藤隆太は自首し、
佐々木蔵之介はスーパー??に転職し、

また、真実を暴いた阿部サダヲも、自身の闇金から借りている金を返却したところを見ると、
塚本明から差し出された報酬を受け取ったと伺えます。

つまり何が言いたいかというと、シャイロックの子供たちは、ちょっとだけ魔がさしてしまった結果、
その代償を払う結果になったが、彼らは3人ともそのリスクを受け入れて、罪を認めたとわかるエンディングになっている。

つまり重要なのは、どの仕事に就き、どのポジションになるか、いくらの給料を得るのかではなく、
嘘偽りのない人生を生きる方がよっぽど
自分にとっては重要なのだと受け入れたという風に僕は捉えました。

個人的には忍成修吾も救われて欲しかったですが、

とまぁそんな感じに咀嚼して飲み込みました。後はみなさんの感想を読んで楽しみたいと思います。

今回はこの辺にします。
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