DJ薄着

犬王のDJ薄着のネタバレレビュー・内容・結末

犬王(2021年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

犬王は、犬王を湯浅監督自身として捉えるとかなり見え方が変わる。奇怪な動きで人々を魅了した犬王が徐々に社会性を獲得し、チームを組んで(腕がめちゃくちゃ長い頃に比べて)表現が凡庸なものへ収束していったのは、湯浅監督初期から近年の活動までを思い出してしまった。(あるいは友魚(無)→友一→友有が監督としての湯浅さんで、湯浅さんたちによってつくられた作品という解釈もできそう。無名のインディーズの頃〜多くの共同製作者の友たちに囲まれる現在まで。名前が変わるとコミュニケーションのチャンネルが掴みづらくなってしまう描写も、無名の頃の友人が〜とか想像すると楽しい。)
作画はすごいけどカメラワークは表からのショットが多くて安パイを選んでいる印象だった。それは能楽へのリスペクトかもしれないけど、もっともっと変な場所から、変なパースで、ブリンブリンに動く友一や犬王を見たかった。
他の人が言うショットの使い回しが多いのは湯浅さんの初期の頃からの癖だと思う。ただその繰り返されるショット自体にあまり面白味を感じられなくて少し単調に感じられてしまった。
音楽は爆音映えするものが多くて、コロナがなければ応援上映で手拍子しながら見たり、でっかいクジラ〜とか映像の中の群衆と一緒に歌うの楽しかったろうし、それでめちゃくちゃ評価変わりそう。2.5次元の流れを汲んだ、ただ見るだけではない鑑賞者も作品へ干渉できるスタイルの上映してほしいな。サントラを車で爆音で流しながらドライブするの楽しかったし、劇場では気付かなかった音をたくさん発見した。
カメラワークやキャラクターの動きに関しては、能楽界や松本大洋ファンから怒られても、もっとめちゃくちゃに挑戦した湯浅監督が見たかったなと思う。近年マーベル的な3Dカメラがぐわんぐわん動く表現はアニメ表現でも普及してきたけど、2Dならではの奇抜なカメラアングルと、こんな選択肢アリ?って笑っちゃうようなテクスチャー、造形をめちゃくちゃ崩したキャラクターの表現がもっと見たかった。しかし終盤の犬王の描かれ方を思い出すと、もう湯浅監督の新しい挑戦を見ることは出来ないんじゃないかと、長年のファンとしてはちょっと寂しくなってしまった。
売るためのお仕着せの意味はいらなくて、アニメには言葉で伝えられない身勝手でめちゃくちゃでペラペラで、だけど通して見るといつの間にか鑑賞者にキャラクターの内臓を想像させてしまうような表現ができるんだって、また感動させてくれることを信じて次回作を待ちます。しばらく休養されるようだけど、まずはお身体大事にして欲しいな。