こなつ

生きるのこなつのレビュー・感想・評価

生きる(1952年製作の映画)
4.0
リメイク版を劇場で先に観てからのオリジナル版を鑑賞。
黒澤明監督作品は初めてだが「羅生門」「七人の侍」「用心棒」「赤ひげ」どれも観たことがないのに、スラスラ、作品のタイトルだけは言える自分に驚く。黒澤監督の作品を観てなくて映画ファンと言えるか、、と怒られそうだが、映画に目覚めたのが遅かったので、まだまだ勉強不足です。

オリジナル版を観て、黒澤明監督が表現したかった演出、伝えたかったことなど骨組み自体がリメイク版でもほぼ同じ様に描かれていて、あらためてカズオイシグロが、黒澤明監督をどれほどリスペクトしているかを強く感じた。

役所の市民課の課長渡辺勘治(志村喬)は、絵に書いたような真面目さで30年間ひたすら働き続けている。それは山積みの書類にただ判子を押すだけの無気力な日々だった。そんな彼が癌に冒され、自分が生きられる時間があと僅かと知り、狼狽える。不意に襲った死への不安、街で出会った小説家に連れられ、遊び回っても人生の意味を見失った渡辺の心は虚しさが募るばかり。そんな時、市役所を辞め玩具店に転職したとよにたまたま会い、彼女の奔放で前向きな生き方を目の当たりにして、残された時間でやり遂げたいもの、己の生きる意味を見付けていく。

この脚本の凄さは、本人の死後に回想で彼の生き様が明かされていくところだろう。突然、遺影が出てきて、そこからまた新たな物語が始まって私達を惹き付ける。
日本と英国の国民性などから演出に細かな違いはあったものの、やはりビル・ナイは洗練された英国紳士の風格で、志村喬はちょっと疲れた役所の万年課長みたいだった。それはそれで味があって楽しめた。

日本では「ミイラ」で、英国では「ゾンビ」あだ名まで国民性の違い?
「ゴンドラの唄」も「ナナカマドの木」も哀愁漂う名曲だった。
どちらの作品も心に沁みる良作。
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