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ソウルフル・ワールドのhikarouchのレビュー・感想・評価

ソウルフル・ワールド(2020年製作の映画)
4.3
はい、今回も恐れ入りましたー。

人が生きる意味を考えさせるために、「よし、まずは主人公に死んでもらおっかー」という恐ろしい出発点w (まあ正確には死んではいないけども)

「リメンバー・ミー」では、この死後の世界を掘り下げていったけど、今回はそこは魂の世界であり、死後だけでなく生前、集中ゾーン、抑うつ状態まであらゆる魂が存在する世界。なんたる世界観。

自分の夢を追いかけること、これと決めた道で高みを目指すことはもちろん素晴らしいことだし、それはありとあらゆる映画や音楽などが諸手を挙げて奨励してきた価値観。だが本作では、「それもまた人生の一部」と言ってのける。それが全てではない。私たちの人生は、そんなに"Basic"ではない。大切な人と過ごす時間、なじみの人たちとの他愛のない会話、季節の移り変わり、ふとした瞬間の感情の積み重ねのすべてが人生を形造るのだ。

意図的かと思えるほどに色々と共通点の多い「セッション(Whiplash)」とも、実に対称的なメッセージ。デイミアン・チャゼルはこの映画キライかもね笑。

個人的にも色々としんどいことの多かった2020年を経て、2021年1発めの本作はとても刺さった。全ての人々を応援するような、人生のすべての瞬間を慈しみたくなるような、そんな優しさに溢れた素晴らしい作品。

アニメでしかできない表現で、アニメで表現することにこそ意義のある作品をブチ込んでくるピクサーには本当に毎度恐れ入る。そんなピクサーはもはや、大人も子どもも楽しめる作り手から、完全なる大人向け作品の作り手に変化したように感じる。

ソウル世界、特にテリーという勘定係の2次元映像表現もキャラクターが新しくて楽しい。カウントが合わない件、そんな解決策で良いんだってのは声出して笑ってしまった。

本作では音楽も魅力のひとつだが、ジャズだけでなく、ソウル世界を演出する電子音楽も素晴らしいと思ったら、やはりトレント・レズナーの仕事。サスガ過ぎる。

ほんとに隙の無いピクサー、コワイです。
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