ノラネコの呑んで観るシネマ

その瞬間、僕は泣きたくなった CINEMA FIGHTERS projectのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

4.3
CINEMA FIGHTERS projectの三作目。
前回の「ウタモノガタリ」のクオリティが、あまりにもあんまりだったので、企画にテコ入れがされたのか、見違えるほどに出来がいい。
若手中心だった監督には、三池崇史と行定勲のベテラン勢が入り、本数が減った分一編の長さも少し伸びた。
全く一貫性の無かった内容も、タイトル通り「泣きたくなる瞬間」という括りができて、全体に非常に観やすくなった。
三池監督の「Beautiful」は、大地震発生時に同時に自殺未遂した男女の生き直しの物語。
シンプルに、人生の喜びの再発見を綴っている。
井上博貴監督の「魔女に焦がれて」は、霊媒体質の同級生に恋した男子高校生の話。
繰り返される目線の演出が、最後に効いてくる。
松永大司監督の「On The Way」は、目の付け所が違う。
メキシコを舞台に、アメリカを目指す移民たちを描く異色の社会派作品。
NPOにやって来た日本人の中途半端な善意が事件を生み、彼自身の生き方をも変える。
複数の意味を持つタイトルが秀逸。
洞内広樹監督の「GHOSTING」は、なかなか面白い時間SF。
2009年に死んだ主人公の亡霊が、その10年前に死んだ初恋の彼女を救おうとする。
映画館のシーンでヒントだけ出る「彼女の一番好きな映画」が、なるほど伏線になってるんだな。
そして、ヤクザ者と母ほど年上の娼婦を描く、行定監督の「海風」は本作の白眉。
お互いの中に失った愛を見る、小林直己と秋山菜津子が素晴らしい。
幸せの青い鳥はどこへ行ったのか。
5本それぞれ、短編映画として良く出来ていて、全体を通しても一定の統一感がある。
前回までのグタグタっぷりで敬遠してる人にも、今回はオススメしたい。
連続参加の松永監督は、前回の希望の農場をモチーフにした「カナリア」も良かったけどね。