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背徳と貴婦人のkabcatのレビュー・感想・評価

背徳と貴婦人(2017年製作の映画)
3.4
18世紀の清を舞台にしたコスチューム・プレイものであるが、タイトルバックのスタイリッシュさ、デコールや衣装・メイクのセンス、そしてこの独特のゆったりした物語の展開はヨーロッパ映画、というよりフランス映画のそれだと言えるだろう。タイトルが誤解を招くが、あからさまにエロティックなシーンは皆無であり、隠された官能性を味わうための作品である。すなわちそれは、主演のファン・ビンビンを愛でるための作品ということだ。監督が入れ込んでたんだろうなあ笑。トラン・アン・ユンの『エタニティ』に通じるものも感じられるが、洗練度は後者のほうが断然上である。皇后の内なる声との対話シーンやアニメーションの組み合わせなどには、もっと違うやり方があったのでは、という感想が残る。

ファン・ビンビンのための映画であるから、彼女はこれでもかといわんばかりに美しく撮られており、特に池に佇む姿などはうっとりするが、だんだんこの整いすぎたお顔を見つめていると怖くなってくる。それよりも皇后のまわりでキャッキャしている侍女たちのほうがナチュラルで可憐でかわいらしく見えてくるのだった。メルヴィル・プポーは10代の頃の姿を知っているので年をとったなあとは思うけれど、いい感じに枯れてます。
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